ドニプロ・ウクライナ

ドニプロ・ウクライナ、またはナドドニプリャーンシチナは、ドニプロ川の中流域に広がる、ウクライナの歴史的な地域を指します。具体的には、現在のキエフ州、ポルタヴァ州、チェルニーヒウ州の西部、キロヴォフラード州とチェルカースィ州の中部、そしてヴィーンヌィツャ州とジトーミル州の東部にあたる地域です。

この地名「ナドドニプリャーンシチナ」は16世紀末以降、「ドニプロ・ウクライナ」は17世紀以降の史料に登場します。元々はキエフを中心とした地域を指していましたが、ウクライナ人による南方の森林草原地帯への植民が進むにつれて、より広範囲を包括するようになりました。

1648年、ドニプロ・ウクライナではフメリニツキーの乱が発生し、この地域はウクライナ・コサック国家の中核となりました。しかし、1667年のアンドルーシウ条約によって、その領土はポーランドとロシアの間で分割され、ドニプロ・ウクライナは右岸ウクライナと左岸ウクライナに分断されることになります。この分断状態は、1793年の第2回ポーランド分割まで続きました。

19世紀後半になると、「ドニプロ・ウクライナ」という言葉は、帝政ロシアの支配下にあったウクライナ人の居住地域全体を指す用語として用いられるようになります。また、ドニプロ・ウクライナは「大ウクライナ」とも呼ばれ、オーストリア帝国の支配下にあった西ウクライナ（ガリツィアとブコビナ）と並び、ウクライナ人の故郷と見なされるようになりました。

1917年、ドニプロ・ウクライナはウクライナ人民共和国の中心地となりましたが、1918年から1920年にかけてのウクライナ内戦の末、ボリシェヴィキ系のウクライナ・ソビエト社会主義共和国の領土となります。

現在、ドニプロ・ウクライナという地域は、1991年にソ連から独立を果たしたウクライナの領土となっています。

参考文献
伊東孝之,井内敏夫,中井和夫 『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 山川出版社, 1998.12. (新版世界各国史 ; 20)

外部リンク
(ウクライナ語) Довідник з історії України. За ред. І. Підкови та Р. Шуста. — Київ: Генеза, 1993.

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