ドビンソン漂流記

漫画『ドビンソン漂流記』の世界

藤子不二雄による『ドビンソン漂流記』は、1971年から1972年にかけて家の光協会が発行していた児童雑誌『こどもの光』に連載された作品で、全24話が収められています。この漫画は、宇宙から地球に漂流した少年ドビンソンを主人公にしたSFギャグストーリーであり、子供たちの興味を引く宇宙をテーマにした作品として、多くの読者に親しまれてきました。

連載の背景

『こどもの光』は、農村向けの家庭雑誌『家の光』の別冊として発行され、その中で漫画を重視する方針が採用されていました。特に1971年という時期は、アメリカのアポロ計画によって月に人間が到達した時代であり、宇宙への関心が高まっていました。このような社会背景の中で、既に名を馳せていた藤子不二雄の藤本弘がこの作品の執筆を手掛けることになったのです。藤本は、雑誌の方針に従い、タイトルや具体的な内容について自由に考案し、連載がスタートしました。

当時の編集長であった村谷直道は、ドビンソンが地球での生活の中で家族を思う気持ちを持っていることが、この家庭向けの雑誌にふさわしいストーリーだったと述べています。

あらすじ

物語は、ポッド星という宇宙の彼方の星から始まります。主人公の少年ドビンソンは、宇宙船の事故に遭遇し、救命ボートで偶然地球に漂着します。地球に住むマサルという少年の家に居候することになったドビンソンは、母星へ帰るため、自作の機械を試みるものの、地球という未知の環境では様々なトラブルが発生します。ドビンソンの個性的な能力や行動が引き起こす騒動は、のちにギャグとしての面白さを生み出し、読者に笑いを提供します。

登場キャラクター

• - ドビンソン: ポッド星人の少年で、地球人に似た姿をしていますが、特異な能力を持っており、熱い蒸気を口から吹き出したり、「カサカ」と叫ぶことで物を逆さまにすることができます。高い知能を持ちつつ、母親を思う優しい一面も持つキャラクターです。
• - ロボート: ドビンソンが乗っていた救命ボートで、名前の通りロボットでもあります。地球に来てからは人間の姿になり、会話も可能です。また、条件を満たせば飛行することもできます。
• - マサル: ドビンソンが居候している少年で、彼との関係は衝突を伴いながらも、深い友情で結ばれています。中盤ではドビンソンの帰還の危機に直面し、彼との別れを惜しむ場面も描かれます。

書誌情報

本作は、双葉社から発行された『ドビンソン漂流記』が原作であり、1977年に全2巻がリリースされました。また、1988年には中央公論社から『星人ドビンソン漂流記』として再出版され、2010年には小学館より『藤子・F・不二雄大全集』の一部としても刊行されました。

『ドビンソン漂流記』は、独自のキャラクター設定とストーリー展開を通じて、宇宙や友情のテーマを子供たちに伝える感動的な作品として、今なお多くのファンに愛されています。

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