ドミートリー・レヴィツキー

ドミートリー・レヴィツキー：ロシア帝国を彩った肖像画家

1735年、ウクライナのキエフで生まれたドミートリー・レヴィツキーは、ロシア帝国を代表する肖像画家として知られています。版画家である父の影響を受け、幼い頃から絵画に親しんだ彼は、その才能を開花させ、後のロシア絵画史に大きな足跡を残しました。

聖職者の父と美術アカデミーでの研鑽

レヴィツキーの父はキエフの聖職者であり、自身も版画家として活動していました。父から絵画の手ほどきを受けたレヴィツキーは、才能を認められ、サンクトペテルブルクの美術アカデミーへ進学します。同アカデミーでは、著名な画家アレクセイ・アントロポフに師事し、高度な画技を磨きました。

アカデミー在学中は才能を発揮し、1770年にはアカデミー展覧会に6点もの肖像画を出展、高い評価を得て一躍有名になりました。その才能が認められ、アカデミー会員に選出されると同時に、肖像画の教授に就任。1788年まで後進の指導にあたりました。

エカチェリーナ2世とスモーリヌィ女学院

レヴィツキーのキャリアにおいて、重要な転換点となったのがエカチェリーナ2世との関わりです。1772年から1776年にかけて、女帝の依頼を受け、彼女が設立したスモーリヌィ女学院の生徒たちを描きました。この女学院は、貴族の女子のための教育機関で、レヴィツキーはそこで学ぶ生徒たちの日常を、ダンスや楽器演奏、演劇など、様々な場面を通して生き生きと描いたのです。

これらの作品は、単なる肖像画にとどまらず、当時のロシア貴族社会の文化や教育の様子を伝える貴重な資料となっています。レヴィツキーの繊細な筆致と、人物の個性を捉えた表現力は、生徒たちの表情や動作にまで細やかに反映されており、観る者に当時の情景を鮮やかに蘇らせます。

洗練された筆致と人物描写

レヴィツキーの作品は、その洗練された筆致と、人物の個性を的確に捉えた描写が大きな特徴です。彼は単に人物の外見を描くだけでなく、それぞれの内面や個性を表現することに心を砕き、モデルの精神性や気品、そして内なる感情までをキャンバスに描き出しました。

彼の作品からは、被写体への深い理解と愛情が感じられ、単なる肖像画を超えた、人間を深く見つめる芸術家としての姿勢が見て取れます。そのため、彼の肖像画は、単なる記録としてだけでなく、時代を超えて人々の心を掴む芸術作品として、今なお高く評価されています。

レヴィツキーの遺産

ドミートリー・レヴィツキーは、1822年にこの世を去りました。しかし、彼の作品はロシア絵画史に燦然と輝く金字塔として、後世に引き継がれています。彼の洗練された画風は多くの画家たちに影響を与え、ロシアの肖像画発展に多大な貢献をしました。

彼の作品は、現在も世界各地の美術館に所蔵されており、多くの人々に感動を与え続けています。レヴィツキーの芸術は、時代を超えて、人々の心に深く刻まれた、不滅の遺産として永遠に輝き続けるでしょう。

参考文献

A. Polowzow: Russkj biografitscheskj slowar. Labsina - Ljaschenko. Isd. Imperatorskago Russkago istoritscheskago obschtschestwa, 1914, S. 149–150. (russisch)
Wadim Polewoi u. a.: Populjarnaja chudoschestwennaja enziklopedija: Tom 1. Sowetskaja enziklopedija, Moskau 1986, S. 391–392. (russisch)

外部リンク

Levitsky in Olga's gallery
Levitsky at CGFA gallery

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