ドライブインシアター

ドライブインシアターの概要

ドライブインシアターとは、広大な駐車場に設けられた巨大なスクリーンで、観客が車に乗ったまま映画を観賞できる映画上映施設です。一般的には「DT」とも略称されます。この形式のシアターでは、駐車場のスペースに区切りを設け、自動車は白線に沿って止められ、スクリーンに映し出される映画を楽しむことができます。また、音声は自身の車内ラジオで受信するか、駐車場に設置されたスピーカーを使用する方法があります。

歴史

誕生の背景

ドライブインシアターは1930年代初頭にアメリカで発明されました。ニュージャージー州カムデンに住んでいたリチャード・ホリングスヘッド・ジュニアが1932年に自宅の車道で初めて映画の野外上映を行い、その後特許を取得して最初のドライブインシアターを開業しました。彼の考案からわずか3年の間に、アメリカ各地でこの形式のシアターが次々とオープンしました。

全盛期

1940年代から1950年代にかけてドライブインシアターは人気を博し、家族全員が安心して楽しむことができる娯楽として広がりました。特に第二次世界大戦後の1940年代には、帰還兵とその家族をターゲットにした劇場の建設ブームが起き、1950年代には数千のドライブインが開設されました。夜間に駐車した車内から映画を観ることができ、その自由さが多くの人々を引きつけました。

人気の理由

ドライブインシアターの魅力の一つは、家族全員が一緒に鑑賞できる点にあります。車内であれば小さな子供が騒いでも他の観客を気にする必要がなく、リラックスした環境で映画を楽しむことができます。また、1950年代にはアメリカ全土で4,000を超えるドライブインシアターが存在しました。

衰退の要因

1970年代に入ると、ドライブインシアターは次第に衰退の道を辿ります。特に、盗難や不正入場（トランクに隠れて入場するなど）の問題が指摘されるようになり、一般の法律や社会的な風潮も厳しくなりました。また、家庭でのエンターテインメントの環境が整ったことで、自宅での映画視聴が普及し、ドライブインシアターの需要が急激に減少しました。

さらに、地価の上昇とともに広い敷地を持つことへの負担も大きくなり、経営が厳しくなりました。ビデオテープやカラーテレビの普及に伴い、映画を楽しむスタイルも変化していきました。特に1990年代には、シネマコンプレックスの登場が影響を与え、全国でのドライブインシアターの数は劇的に減少しました。

COVID-19による再評価

2020年に新型コロナウイルスの影響で、映画館が閉鎖される中、再びドライブインシアターの注目が集まります。他者との接触を避けられる特性が評価され、多くのドライブインシアターが新しく設けられたり、再開されることとなりました。イランやアメリカでは、この形式の上映が増え、観客が盛況を持って訪れるケースが多く見られます。

日本におけるドライブインシアター

日本でも1962年に初のドライブインシアターが登場しましたが、次第にシネマコンプレックスの影響を受けて数が減り、2020年時点では存在しませんでした。しかし、COVID-19の影響で仮設ドライブインシアターが各地で実施され、再び注目されるようになりました。過去の形態と新たな状況が結びつき、今後の文化としての可能性が期待されています。

結論

ドライブインシアターは、単なる映画鑑賞の場を超えて、家族や友人と共に特別な時間を過ごすためのユニークな体験として、歴史とともに変遷してきました。近年の状況からも、独特の楽しみ方やシチュエーションを提供できる可能性を持つことが示されています。それでもなお、その時代に求められる形や機能が変わる中で、ドライブインシアターの未来はどうなるのでしょうか。

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