ドラゴンクエストシリーズの呪文体系

ドラゴンクエストシリーズにおける呪文体系

ドラゴンクエストシリーズは、数多くの呪文が登場するロールプレイングゲームとして知られています。本稿では、シリーズにおける多様な呪文を体系的に解説します。

呪文の位置づけ

多くのRPGに魔法や呪術が登場しますが、ドラゴンクエストシリーズでは詠唱を伴う魔法を「呪文」と呼びます。呪文は勇者、魔法使い、僧侶など、職業によって習得できるものが異なり、シリーズによっては複数の系統の呪文を操ることも可能です。さらに、敵キャラクターも呪文を使用し、中には敵専用呪文も存在します。

呪文の習得方法は作品によって異なります。訓練で習得できる世界もあれば、呪文使い自体が稀な世界もあります。多くの作品では、キャラクターのレベルアップによって呪文を覚えますが、『VI』以降は職業レベルやスキルポイントが導入され、『IX』以降では職業固有の呪文も登場しました。イベントによって習得する呪文も存在します。

呪文名の特徴

言語学者である山口治彦氏は、ドラゴンクエストシリーズの呪文名に5つの特徴を指摘しています。

1. 真性型呪文: 一見して意味が分かりにくい呪文です。
2. ことば遊び: 「マホカンタ」（魔法＋カウンター）や「ホイミ」（「休み」を分解・逆順）のように、言葉遊びが用いられています。これは呪文の意味を覚えやすくするため、また、脈絡のない命名を避ける工夫と考えられます。
3. 短さ: 『V』までは5文字以内という制限があり、『VI』以降も7文字以内に収められています。これは表示画面の制限によるものです。
4. オノマトペ: 「メラ」「ヒャド」「バギ」などはそれぞれ「メラメラ」「冷やっと」「バキッ」といった擬音語であり、呪文の効果を連想させます。
5. 階層性: 「メラ」に語尾を付け加えることで、呪文の威力を表現しています。音節が多いほど強いという言語特性も利用されています。ただし、「ベホマ」と「ベホイミ」、「ヒャダイン」と「マヒャド」など、例外もあります。

初期の英語版Dragon Warriorでは、文字制限がなかったため、効果を直接示す英単語で訳されていました。しかし、Dragon Quest以降は、効果を連想させる言葉を用いた独自の翻訳が試みられています。「ホイミ」など、ことば遊びで生まれた呪文は翻訳が困難なため、意味から名付けられています。

呪文の種類

ドラゴンクエストシリーズの呪文は、大きく分けて攻撃呪文、補助呪文、回復呪文、移動呪文などに分類されます。それぞれの呪文には消費MPが設定されており、MPが不足していると使用できません。MPは宿屋で回復するか、アイテムを使用する必要があります。

系統によって接頭語・接尾語が用いられ、呪文の威力や効果範囲が区別されています。「マホ〜」「ミナ〜」「ベ〜」「〜マ」といった傾向が見られます。

攻撃呪文

火、氷、雷などの属性を持つ呪文で、相手に直接ダメージを与えます。多くの作品では、使用者のレベルや能力に関係なく一定のダメージを与えますが、『VIII』では「賢さ」、「IX」では「攻撃魔力」がダメージに影響します。モンスターには属性ごとの耐性が設定されており、ダメージ量は耐性によっても変動します。

ダメージ系（系統別）

メラ系、ギラ系、イオ系、ヒャド系、バギ系、デイン系、ドルマ系、ジバリア系、ベタン系、ザバ系、ドガン系など、様々な系統が存在し、それぞれに小級、中級、上級、最上級の呪文が存在します。

ダメージ系（系統外）

上記系統に分類されない呪文としては、コーラルレイン、メイルストロム、ジゴフラッシュ、グランドクロス、ジゴスパーク、ビッグバン、マダンテ、絶対零度、デモン・バースト、イビルアイ、彩蜂、災厄の焔、○○マータ、合体呪文（メラハリケーン、ダークデイン、メドローアなど）などがあります。

非ダメージ系

即死系呪文（ザキ系、メガンテ、ニフラム、バシルーラ）、敵の行動を妨害する呪文（攻撃補助呪文）などがあります。

攻撃補助呪文

ラリホー、メダパニ、マヌーサ、ルカニ、ボミエ、ダウン、フール、マホトム、ペスカトレ、マホトラなど、敵の行動やステータスに制約をかける呪文です。

補助呪文

味方のステータスを上げる呪文です。スカラ、スクルト、ピオラ、バイキルト、インテ、マホステ、マホキテ、マホターン、バーハ、アストロン、モシャス、ドラゴラムなどがあります。

回復呪文

味方の状態異常を回復したり、HPを回復する呪文です。ホイミ系、リホイミ系、キアリー、キアリク、ザメハ、ザオ系、メガザル、シャナク、マホイミ、マホアゲルなどがあります。

移動呪文

ルーラ、リレミト、トラマナ、ラナルータ、レミーラ、アバカム、トヘロス、インパス、レムオル、ステルス、フローミなどがあります。

その他

パルプンテ、リバース、シャッフルなど、特定の分類に属さない呪文です。

漫画・アニメ作品に登場した呪文

『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』、『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』、『ドラゴンクエスト アベル伝説』などの派生作品にも、オリジナル呪文が登場します。

現実世界での人気

2021年のアンケート調査では、「ルーラ」が最も日常生活で使いたい呪文として挙げられました。その他、「ホイミ」「ベホマ」「パルプンテ」「ザオリク」なども高い人気を集めました。

結論

ドラゴンクエストシリーズの呪文体系は、その多様性と奥深さで、シリーズの魅力を大きく構成する要素となっています。呪文名の造語センスや、それぞれの呪文が持つ効果、そして現実世界での人気と、様々な角度から考察することで、その魅力をより深く理解することができるでしょう。

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