ドラゴンヴァラー

概要

1999年 12月2日、ナムコ（現・バンダイナムコエンターテインメント）よりPlayStation用ソフトとして発売された本作は、1985年のアーケードゲーム『ドラゴンバスター』の世界観を継承しつつも、システムやストーリーは独立した作品として開発されたアクションRPGです。前作に存在したルームガーターや一部の魔法アイテムが廃止された一方で、多種多様な魔法やステータス上昇アイテム、売買専用品が豊富に登場。また、フル3D化に伴い、アクション性が大幅に強化されています。『ドラゴンバスター』でお馴染みの「兜割り」「垂直切り」といった剣技に加え、連続攻撃、緊急回避、溜め攻撃、居合い斬りなどが新たに実装され、より戦略的な戦闘が可能となりました。

本作最大の特色は「世代交代」システムです。物語は初代主人公である滅竜士クロヴィスから始まり、彼と結ばれたヒロインとの間に生まれた子、さらに孫、曾孫へと主人公が引き継がれていきます。一族は祖父クロヴィスの宿命を受け継ぎ、ドラゴン討伐の旅を続けていくのです。物語はチュートリアルを兼ねた序章と、本編である五章構成で紡がれます。

物語の始まり

遥か昔より、人間社会の裏ではドラゴンと、それを討伐する宿命を背負った「滅竜士」との秘めたる戦いが繰り広げられていました。ある滅竜士が魔剣アゾスを振るいドラゴンに挑みますが、力及ばず敗退。ドラゴンの放った灼熱の炎は、滅竜士のみならず近隣のブライズ村を瞬く間に焼き尽くしました。

偶然にも村を離れていた青年クロヴィス・バークレーが帰郷した際、目にしたのは故郷の変わり果てた姿と、炎に焼かれて命を奪われた最愛の妹、エレーナの無残な亡骸でした。深い悲しみと絶望に打ちひしがれるクロヴィスの前に、一本の古めかしい剣が現れます。その剣を手に取った彼は、直感的に村を襲ったのがドラゴンであること、そしてこの剣こそがドラゴンを滅ぼす力を持つ魔剣であることを悟ります。

妹の仇を討つため、そして二度と悲劇を起こさせないため、クロヴィスの孤独な復讐の旅と、後に彼の子孫へと受け継がれていく一族の壮絶な戦いがここから始まるのです。

報復者クロヴィスの戦い

魔剣アゾスを得たクロヴィスは、燃え盛る山道を駆け上がり、仇敵ドラゴンを追います。道中の怪物たちを薙ぎ払い、山頂に辿り着いた彼が見たのは、先の滅竜士との戦いで傷を負い、癒えぬまま佇むドラゴンの姿でした。クロヴィスは果敢に挑み、ドラゴンに致命的な一撃を与えますが、ドラゴンは古代の転生術を用いて幼体へと姿を変え、逃げ去ってしまいます。復讐を誓ったクロヴィスは、滅んだ村を後にし、一人旅立ちました。

五年後、滅竜士としての旅を続けるクロヴィスはラクシス王国にたどり着きます。そこは、ドラゴンの加護を称するアゼル騎士団の反乱により王が殺害され、騎士団と彼らが使役する魔物によって支配された地と化していました。アゼル騎士団長ヴォーレフは、謎の錬金術師ライムンの策略に乗せられ反乱を起こし、王女セリアとの婚姻を目論んでいました。

アゼル騎士団を追うクロヴィスは、襲われていた発明家の少女カロリナを救い出し、捕虜収容所では近衛騎士の地位を剥奪された老騎士スティーブ・グロースター卿と出会い、その協力を得ます。やがて近衛騎士団による王都奪還作戦が開始され、その混乱に乗じてクロヴィスは王城に潜入。城内で囚われの身となっていたセリア王女を救出し、ヴォーレフを打ち破ります。そして、因縁の錬金術師ライムンと対峙しますが、彼の正体はドラゴンに傀儡とされた、亡き妹エレーナの婚約者アレッドでした。衝撃を受けつつも、アレッドを打ち倒したクロヴィスは、王城地下霊廟に潜む仇敵ドラゴンとの決戦に挑みます。未だ幼体で力を取り戻していないドラゴンに対し、クロヴィスは激闘の末勝利を収め、エレーナやアレッド、そして犠牲となった人々の魂を解放しました。

しかし、復讐を果たしたクロヴィスに残されたのは、全てを失った虚無感だけでした。慟哭する彼の傍らで、地上では解放された王都の人々が歓喜に沸き、その中にカロリナとセリア王女、二人の女性がクロヴィスの帰還を待ち望んでいました。

世代交代と分岐する運命

本作の物語は、第一章の結末、特にクロヴィスがどちらのヒロイン（セリアまたはカロリナ）と結ばれるかによって、第二章以降の展開が大きく分岐します。この分岐により、次章の主人公、ストーリーライン、探索するステージ、そして対峙するドラゴンまでもが変化します。

主人公の交代は血縁によって行われ、クロヴィスの選択がその後の子孫たちの運命を決定づけることになります。さらに、プレイヤーが前章の主人公をどのように育てたか（剣技主体か、魔法主体かなど）によって、次章の主人公の初期パラメータも変化するというユニークなシステムが採用されています。

受け継がれる意志

物語は世代を超えて受け継がれます。第二章以降の主人公は、第一章でクロヴィスがセリアと結ばれた場合は王子のアーレン、カロリナと結ばれた場合は息子のコーデルとなります。第三章では、アーレンの子である王子のフェリペ、あるいはコーデルの子である貿易商のフィリップが、それぞれ異なる魔剣と運命を背負います。さらに物語は進み、第四章、第五章ではフェリペ/フィリップの子である皇女のアンナか皇子のミハエル、またはコーデルが誰とも結ばれなかった場合の第三のルートでは、コーデルの養子のジェロムと彼の娘アニタが主人公として登場し、それぞれの宿命に立ち向かいます。

立ちはだかる者たち

プレイヤーの行く手には、ドラゴンだけでなく、様々な野望や悲しみ、狂気を抱えた人間や異形の存在が立ち塞がります。第一章でクロヴィスと敵対する黒騎士ヴォーレフや錬金術師ライムン（アレッド）、第三章で主人公を翻弄する宰相ゾマスや魔物グルサムセウスなどです。また、ドラゴンの力の一部を得たドラゴンハーフたち（ヴァプラ、ハルファス、クロセル）も物語の重要な鍵を握ります。

そして、各章のクライマックスでは強力なドラゴンとの激戦が待っています。炎を司るレイジドラゴン、地を這うタイタンドラゴン、氷の力を操るアークトスドラゴン、双頭のヘルファイア/インフェルノドラゴン、風のテンペストドラゴン、雷のサンダードラゴン、不死のハデスドラゴン、異形のタロンドラゴンなど、その種類は多岐にわたります。そして、物語の最終局面では、あらゆる悪の集合体にして、物語の根源である真の最終ボス、アズィ・ダハーカが主人公たちの前に立ちはだかります。

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