ドント・パス・ミー・バイ

ドント・パス・ミー・バイ：リンゴ・スターの隠れた名曲

1968年、ビートルズの9作目のオリジナルアルバム『ザ・ビートルズ』（通称ホワイトアルバム）に収録された「ドント・パス・ミー・バイ」。この曲は、リンゴ・スターが作詞作曲を手掛けた、カントリーロック調の楽曲であり、彼のキャリアにおけるソングライターデビュー作として知られています。

リンゴ・スターのソングライティングへの道

スターが「ドント・パス・ミー・バイ」の着想を得たのは、なんと1964年まで遡ります。ニュージーランドでのラジオインタビューで、当時既に曲作りに挑戦していたことをポール・マッカートニーが明かしており、スター本人はカントリー＆ウェスタン風の楽曲を目指していたと語っています。しかし、レノンとマッカートニーがブルース調に歌い上げたことにより、予想外の仕上がりとなったと振り返っています。この曲は、スターにとって自身の楽曲を形にするという大きな一歩となった、特別な作品なのです。

レコーディング：意外な参加メンバーと未使用のオーケストラ曲

レコーディングは1968年6月と7月、EMIレコーディング・スタジオで行われました。興味深いのは、レコーディングに参加したのはスター、マッカートニー、そしてヴァイオリニストのジャック・ファロンの3名のみだったことです。レノンとハリスンは参加していませんでしたが、レノンはセッションに立ち会い、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」の一節を歌う場面もあったようです。

更に、ジョージ・マーティンが「ドント・パス・ミー・バイ」のイントロとして作曲したオーケストラの小曲は、最終的に使用されませんでした。この曲は後に「ア・ビギニング」として発表され、別テイクがビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』でも使用されています。

シングルカットとチャート成功

「ドント・パス・ミー・バイ」はスカンジナビアでシングルカットされましたが、興味深いことに、作者名がレノン＝マッカートニーと誤って表記されていました。しかし、1969年4月にはデンマークのシングルチャートで1位を獲得するなど、高い人気を博しました。

多彩な評価とカバー

音楽評論家からは、スターのカントリー＆ウェスタン調の楽曲として高く評価されています。特にジャック・ファロンのヴァイオリン演奏やバグパイプを思わせる効果音は絶賛されました。『クラシック・ロック』誌では、ホワイトアルバムを代表する4曲のうちの1つに選出されるなど、その音楽的価値は高く評価されています。

様々なアーティストが「ドント・パス・ミー・バイ」をカバーしており、その中には、ジョージア・サテライツ、ザ・パンクルズ、フィッシュなどがいます。フィッシュによるブルーグラスアレンジ版はライブアルバムにも収録され、リンゴ・スター自身も2017年のアルバムでセルフカバーしています。

ア・ビギニング：幻のイントロ曲

「ア・ビギニング」は、ジョージ・マーティンが「ドント・パス・ミー・バイ」のイントロとして作曲したインストゥルメンタル楽曲です。しかし、最終的には使用されず、未発表音源として長年眠っていましたが、『ザ・[[ビートルズ・アンソロジー]]3』で世に出ることとなりました。当初は別曲が予定されていましたが、諸事情により本作が選ばれました。

その後、『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) ＜スーパー・デラックス・エディション＞』では、「ドント・パス・ミー・バイ」のテイク7のイントロとして収録されています。

結論：リンゴ・スターの才能とホワイトアルバムの魅力

「ドント・パス・ミー・バイ」は、リンゴ・スターのソングライターとしての才能、そしてホワイトアルバムの多様性を象徴する楽曲です。レコーディング過程や楽曲の評価、そして様々なカバーバージョンを知ることで、この曲の魅力が更に深まるでしょう。さらに、「ア・ビギニング」という関連楽曲の存在も、この曲の背景をより豊かに彩っています。

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