ド・ディオンアクスル

ド・ディオンアクスル：乗り心地と軽量化を両立するサスペンションシステム

ド・ディオンアクスルは、自動車における後輪駆動車のサスペンション方式の一種です。ライブアクスル方式の一種でありながら、独自の機構によって、ばね下重量の軽減と優れた路面追従性を実現しています。その名称は、フランスの自動車メーカー、ド・ディオン・ブートン社の創業者、アルベール・ド・ディオン伯爵に由来しますが、実際の発明者はシャルル・トレパルドゥーであるとされています。1893年の開発以来、長きに渡り様々な車種に採用されてきました。

ド・ディオンアクスルの仕組み

一般的なライブアクスル方式では、デファレンシャルギアがアクスルハウジングに固定されているため、サスペンションの動きに合わせて動くことになり、ばね下重量が増加します。これに対し、ド・ディオンアクスルはデファレンシャルギアを車体側（ばね上）に配置することで、この問題を解決しています。これにより、ばね下重量を大幅に削減し、路面からの振動を効果的に吸収することが可能になります。

この方式では、左右の車輪はアクスルハウジングであるド・ディオンチューブで剛結されています。そのため、左右の車輪は独立して動くわけではありませんが、ドライブシャフトにはユニバーサルジョイントなどの自在継手が用いられているため、車輪へのトーやキャンバー角を調整することができます。

アクスル自体の位置決めは、リーフスプリングやトレーリングアームとラテラルロッド（パナールロッド）やワットリンクなどの組み合わせによって行われます。

ド・ディオンアクスルのメリット

ばね下重量の軽減: デファレンシャルギアをばね上に配置することで、ばね下重量を低減し、路面追従性と乗り心地を向上させます。
優れた路面追従性: ばね下重量の軽減により、路面からの衝撃を効果的に吸収し、より快適な走行を実現します。
床面高さを抑えられる: デフの上下動がないため、車体床面の高さを低く抑えることができます。
構造のシンプルさ: 比較的シンプルな構造のため、製造コストを抑えることができます。

ド・ディオンアクスルのデメリット

独立懸架ではない: 左右の車輪は剛結されているため、独立懸架と比較すると、路面追従性は劣ります。
アクスルチューブの強度: ド・ディオンチューブは、高い強度が求められます。

ド・ディオンアクスルの採用車種

ド・ディオンアクスルは、歴史的に欧州車を中心に採用されてきました。日本では、プリンス自動車の初代スカイラインが最初期の採用例として知られていますが、その後は一時的に採用が減少しました。しかし近年では、特に4WDの軽自動車や小型車を中心に、コストパフォーマンスの良さから再び採用例が増えています。具体的には、ホンダ、トヨタ、ダイハツ、スズキなどのメーカーの車種に採用されています。また、リアミッドシップレイアウトのスマートや三菱iなどにも採用例があります。競技車両への採用例もあります。

まとめ

ド・ディオンアクスルは、ばね下重量の軽減と優れた路面追従性を両立させた、コストパフォーマンスに優れたサスペンション方式です。そのシンプルな構造と高い信頼性から、現在でも多くの車種に採用され続けています。ただし、独立懸架方式に比べて路面追従性はやや劣るため、車両の特性に合わせて最適なサスペンション方式を選択する必要があります。

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