ドーハラウンド

ドーハラウンド（Doha Round）

ドーハラウンドとは、2001年にカタールのドーハで開始された世界貿易機関（WTO）の貿易交渉の一つであり、貿易障壁を取り除くことを主な目的としています。正式には「ドーハ開発アジェンダ（Doha Development Agenda）」と呼ばれていますが、一般的には「ドーハ・ラウンド」という名称が広く使われています。この名称は、開発途上国の意見を受けて名付けられたもので、多角的な交渉の過程で反発があったことから、あえて「開発」という言葉を含めることで、より包摂的な印象を持たせています。

ドーハラウンドの経過

ドーハラウンドの交渉開始は、2001年のWTO第4回閣僚会議で正式に宣言され、その後、数回のメキシコ（2003年）やジュネーブ（2011年）での閣僚会議を通じて、多くの困難に直面しました。特に、2003年のカンクン会議では閣僚宣言案が採択されず、交渉は一時中断することとなりました。その後は、部分的な合意を形成しながら、交渉を再開する新たなアプローチが採用されました。

2013年のバリ会議では、貿易円滑化や農業、発展に関する分野で部分合意が成立し、これが「バリ合意」として知られる成果に結びつきました。この合意の一環として、貿易円滑化協定がWTO協定に加えられることが決まりましたが、インドの反対によって当初の期限内には採択されず、一年後の2014年11月27日になんとか合意に達しました。こうして、2017年2月22日には、多くのWTO加盟国による改正受諾のもと貿易円滑化協定が正式に発効しました。

交渉の状況と課題

ドーハラウンドにおける交渉は、農業分野での意見対立が顕著でした。自由貿易を推進するケアンズグループやアメリカの輸出国グループと、保護政策を優先するEUや日本、スイスといった国々、そして特に発展途上国による保護を求める動きが複雑に絡み合い、議論は膠着状態に陥りました。

さらに新興国（中国、インド、ブラジルなど）とアメリカとの対立も、さまざまな分野で問題を引き起こし、交渉の進展を妨げました。そのため、バリ合意後の貿易円滑化以外には大きな動きが見られないままです。

このような背景の中で、日本はWTOを支える自由貿易体制の構築を目指していますが、経済戦略の見直しが避けられず、EPA/FTA交渉（TPPなど）の推進や、情報技術協定（ITA拡大）、新サービス貿易協定（TiSA）、環境物品自由化交渉などに積極的に取り組んでいます。

結論

結局のところ、ドーハラウンドは貿易交渉の重要な一歩であり、開発途上国の視点を取り入れた取組みとして注目されています。しかし、交渉の難航や意見対立は依然として存在しており、今後の進展が求められています。

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