ドール・カーカム式望遠鏡

ドール・カーカム式望遠鏡：小型で高性能な反射望遠鏡

ドール・カーカム式望遠鏡は、カセグレン式反射望遠鏡の一種として知られています。一般的には、楕円面主鏡と球面副鏡を用いたカセグレン型反射望遠鏡と説明されますが、その誕生秘話には興味深い経緯があります。

1932年、イギリスのアマチュア天文家ホレース・ドールは、当時としては非常に小型軽量なカセグレン式望遠鏡を製作しました。鏡筒径わずか482.6mm、総重量2.5kgというその望遠鏡は、イギリス天文学会で発表され、注目を集めました。この望遠鏡は、口径152.4mm、主鏡焦点距離489mm(F3.2)、副鏡径30.5mm、合成焦点距離1980mm(F13)という仕様で、正立像を得るための色消し正立レンズ(径21.5mm、焦点距離50.8mm)も備えていました。

その後、アラン・カーカムがドールの望遠鏡の計算式を考案し、『アマチュア・テレスコープ・メーキング』の編者であるアルバート・G・インゴールスによって、1951年に「ドール・カーカム式望遠鏡」と命名されました。

ドール・カーカム式望遠鏡の優位性

この望遠鏡の大きな特徴は、正立像が得られる点にあります。一般的なカセグレン式望遠鏡では、正立像を得るために複雑な機構が必要となる場合がありますが、ドール・カーカム式望遠鏡は正立レンズを用いることで、シンプルに正立像を実現しています。さらに、正立レンズの使用により、カセグレン式望遠鏡で問題となる遮光筒が不要になります。

もう一つの特徴は、合成焦点距離が前方にあるため、副鏡が非常に小さくて済む点です。これにより、副鏡による回折現象による画質の劣化が抑制され、シャープな画像が得られます。

光学系と特徴

ドール・カーカム式望遠鏡の主鏡は、球面鏡を放物面鏡に修正する過程で得られる楕円面鏡です。この形状は、自作が比較的容易であるという利点があります。さらに、点光源とナイフエッジを用いた簡単な方法で、鏡面の精度を正確に検査することができます。

ただし、コマ収差はやや大きいため、カセグレン式望遠鏡の約4倍にも達します。そのため、高倍率での観測には適していますが、広視野での観測には向いていません。一方で、主鏡と副鏡の光軸合わせが容易であるため、調整が比較的容易というメリットもあります。

まとめ

ドール・カーカム式望遠鏡は、小型軽量で扱いやすく、自作も可能な魅力的な望遠鏡です。シャープな像を得ることができ、高倍率での観測に適しているため、アマチュア天文家にとって非常に人気があります。コマ収差がやや大きい点を考慮すれば、天体観測を始める方や、自作望遠鏡に挑戦してみたい方にとって最適な選択肢の一つと言えるでしょう。正立像が得られるため、地上観察にも利用できる汎用性も備えています。

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