ナウカ (ロシアの出版社)

ナウカ出版社：ロシア科学を支えた歴史と変遷

ナウカ（Наука）は、ロシア語で「科学」を意味し、その名の通り、科学出版の分野で長年にわたり重要な役割を果たしてきた出版社です。モスクワに本部を置き、ソビエト連邦時代から存在し、最盛期にはソ連最大、そして世界最大級の科学系出版社として知られていました。正式名称は「ロシア科学アカデミー・アカデミー科学出版、製造・印刷出版・書籍販売センター『“ナウカ”出版社』」です。

歴史

その起源は1727年にまで遡ります。帝政ロシア時代にペテルブルク科学アカデミー印刷所として発足しました。ソビエト・ロシア時代に入ると、1923年4月14日にアレクサンドル・フェルスマンを社長として、「ロシア科学アカデミー出版社」として再設立されました。翌1924年末には最初の出版物である『ロシア科学アカデミー・ニュース』が発行されました。

1925年には、アカデミーの名称変更に伴い、「ソビエト連邦科学アカデミー出版社」と社名も変更されました。1927年には、出版社社長はアカデミーの総会で選出されることになりました。1930年には、編集委員会が組織され、その理事会もアカデミーの総会で選任されることになりました。1931年には社内に伝達部門が設立され、後に独立して書店「アカデムクニーガ」となりました。

1934年には本社がモスクワに移転しましたが、レニングラード支局は残されました。大祖国戦争中は、本社は一時的にカザンへと退避しました。1963年には、社名が現在の「ナウカ」へと改称されました。この頃から出版点数や部数も増加し、1963年には2000タイトル、3万8000部を出版しています。翌年には、「フィズマトギス」と「東洋文学出版社」がナウカの傘下に入りました。1970年には、ノヴォシビルスクに印刷所が設立され、モスクワ2か所、レニングラード、ノヴォシビルスクの計4か所の印刷所を擁するようになりました。

1972年の時点では、ナウカは物理学・数学、化学、生物学、大衆科学など、多岐にわたる分野で135タイトルの科学雑誌を発行していました。特に、『プリローダ』、『ゼムリャ・イ・フセレンナヤ』、『ヒミヤ・イ・ジズニ』などの雑誌は広く知られていました。1977年には140タイトルの雑誌を発行し、その部数は1200万部を超えました。また、ナウカは『ソビエト連邦科学アカデミー・ドキュメント』や『ソビエト連邦科学アカデミー紀要』も出版していました。1973年と1978年には、ナウカは労働赤旗勲章を受章しました。

1980年代初頭からは外国語部門を設置し、『ソビエト連邦の科学』誌をロシア語以外にも英語、ドイツ語、スペイン語で発行しました。1980年代後半には、社会政治分野、科学技術分野、フィクション分野の3つの編集局に分けられました。ソ連崩壊後も、ナウカとアカデムクニーガはロシア科学アカデミー附属の独立した出版社・書店として存続しています。

出版活動

ナウカは、その長い歴史の中で、多くの科学研究成果を出版し、ロシア、そして世界の科学発展に大きく貢献してきました。自然科学から人文科学まで、幅広い分野の書籍や雑誌を出版しており、ソ連時代から現代に至るまで、ロシアの科学界を支える重要な役割を果たしています。

批判

一方で、ナウカには批判も存在します。2006年、生物学者のアレクサンドル・マルコフは、ナウカが出版物のネット上での公開に消極的であることを指摘し、その情報戦略を批判しました。また、2008年には、ロシアの科学雑誌の出版をナウカが独占している状況を批判し、雑誌価格の高騰についても言及しました。これらの批判は、ナウカが科学情報へのアクセスを制限しているのではないかという懸念を示しています。

現在

ナウカは現在もロシア科学界における重要な出版社の一つであり、その出版活動は多岐にわたります。過去の遺産を守りつつ、現代のデジタル化に対応し、科学情報の普及に貢献することが期待されます。ナウカの今後の動向は、ロシアの科学発展に大きな影響を与えると言えるでしょう。

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