ナウムブルク大聖堂

ナウムブルク大聖堂：時を超えて語り継がれる美と伝説

ドイツ北西部、ザーレ川沿いのナウムブルクにそびえ立つナウムブルク大聖堂は、聖ペテロと聖パウロに捧げられた壮麗な大聖堂です。その起源は11世紀に遡り、幾多の変遷を経て現在の姿に至っています。特に、西内陣に安置された『ウタ・フォン・バレンシュテットとエッケハルト』像は、ドイツ・ゴシック彫刻の最高傑作として知られ、訪れる人々を魅了し続けています。2018年には、その文化的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。

大聖堂の歴史

ナウムブルク大聖堂の歴史は、1028年にオットー大帝がツァイツに設置した司教座がナウムブルクに移されたことに始まります。辺境伯エッケハルトとその兄弟ヘルマンは、司教座設置のために自らの城を寄進し、大聖堂の建設に大きく貢献しました。1044年には最初のロマネスク様式の大聖堂が献堂され、その後、1217年に司教エンゲルハルトが新しい後期ロマネスク様式の大聖堂の建設を開始しました。増築作業は後継の司教たちに引き継がれ、長い年月をかけて現在の壮麗な姿へと発展しました。

内部装飾：芸術の粋

大聖堂内部には、数多くの芸術作品が所蔵されています。中でも、東内陣地下のクリプタは1170年から1180年頃に建造されたもので、大聖堂内で最も古い部分です。そして、西内陣に安置された12体の寄進者の等身大の像は、「ナウムブルクの名匠」と呼ばれる彫刻家による傑作として高く評価されています。特に、辺境伯エッケハルトとその妃ウタの像は、「比類ない」「完璧」と評され、その写実的な表現と気品ある佇まいは、見る者を圧倒します。これらの彫刻像は、建築構造から独立した彫刻像の先駆けとして、美術史においても重要な位置を占めています。

伝説：大聖堂に秘められた物語

グリム兄弟の『ドイツ伝説集』には、ナウムブルク大聖堂にまつわる二つの伝説が収録されています。一つは、泣く男と笑う女の石像の物語です。かつて婚約者だった二人は、男の放浪癖が原因で別れ、女は大聖堂を建立しました。帰還した男は婚約者を失った悲しみに暮れ、女はそれを見て笑ったという悲しい物語です。もう一つは、大聖堂の尖塔に関する伝説です。師匠と弟子の二人がそれぞれ尖塔を建造しましたが、弟子の作品があまりにも優れていたため、嫉妬に駆られた師匠は弟子を突き落として殺害してしまいます。その後、師匠も油釜でゆで殺されたと伝えられています。

世界遺産：普遍的な価値

ナウムブルク大聖堂は、その歴史的、芸術的、文化的価値が認められ、2018年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。

ナウムブルク大聖堂は、過去と現在を結びつけ、訪れる人々に深い感動とインスピレーションを与え続ける、人類共通の財産です。

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