ナウムブルク市電

ナウムブルク市電：歴史と復活を遂げたドイツの希少な路面電車

ナウムブルク市電は、ドイツのナウムブルク市内を走る全長2.9kmの小規模な路面電車です。東ドイツ時代に製造された二軸車が現役で使用されていることで知られ、そのレトロな雰囲気が多くの鉄道ファンや観光客を魅了しています。施設の老朽化や乗客減少により一時廃止の危機に瀕しましたが、市民の熱意によって復活を遂げ、現在も運行を続けています。

蒸気路面鉄道から路面電車へ

19世紀後半、ナウムブルクでは馬車鉄道や路面電車の計画が持ち上がりましたが、財政難や戦争の影響で実現しませんでした。1892年、民間企業であるナウムブルク蒸気路面鉄道株式会社が設立され、蒸気機関車を用いた路面鉄道がようやく開業しました。しかし、利用客数や収益が伸び悩み、1900年に同社は倒産。路線はナウムブルク市が引き継ぎ、1906年に電化されることが決定しました。

路面電車の再開業と発展

蒸気路面鉄道の廃止後、電化工事は迅速に進められ、1907年1月2日にナウムブルク市電は路面電車として再開業しました。当初はナウムブルク中央駅と市内中心部を結ぶ路線でしたが、1914年には市内を循環する環状線が完成し、総延長5.3kmの路線網となりました。第一次世界大戦の影響で更なる路線延長は実現しませんでしたが、開業時に導入された車両が長く使用されました。

第二次世界大戦と東ドイツ時代

第二次世界大戦末期、ナウムブルクは空襲により甚大な被害を受け、路面電車も大きな損傷を受けました。戦後、復旧作業が行われましたが、環状線は単線・時計回りの運行のみとなりました。東ドイツ時代には、国有企業であるナウムブルク路面鉄道となり、変電所の新設や車庫の近代化、そして東ドイツ製の二軸路面電車の導入が行われました。1959年には環状線の反時計回りの運行も再開されました。

運行休止から奇跡の復活へ

しかし、利用客の減少により、1970年代以降、ナウムブルク市電は幾度となく存廃問題に直面しました。オイルショックや市民の反対運動によって全線廃止は免れたものの、施設の老朽化は深刻化し、長期にわたる運行休止も発生しました。ドイツ再統一後、経済情勢の変化により、ナウムブルク市電の存続はさらに困難な状況となりました。1991年8月18日、道路整備を理由に全線で運行が休止され、事実上の廃止状態となりました。

しかし、1993年、観光客の交通手段として市電を復活させる計画が立ち上がり、運営権が民間会社に移管されることになりました。1994年にはナウムブルク路面鉄道有限会社が設立され、同年6月24日に一部区間での営業運転が再開されました。その後、路線の延伸が進められ、2017年12月1日には全線が開通し、見事に復活を遂げました。

現代のナウムブルク市電

現在、ナウムブルク市電は4系統として、ナウムブルク市内の公共交通機関の一翼を担っています。中央駅とザルツトールを結ぶ全線が30分間隔で運行され、市民や観光客に利用されています。運賃は片道2ユーロですが、各種割引乗車券も用意されています。

レトロな車両たち

ナウムブルク市電では、電化開業以降、二軸車が主力車両として活躍しています。東ドイツ時代に製造された車両が多く、レトロな外観が特徴です。バリアフリー対策は施されていませんが、その分、往年の雰囲気を今に伝える貴重な存在となっています。

ナウムブルク市電は、その歴史的な価値と市民の熱意によって復活を遂げた、ドイツの宝とも言える路面電車です。ナウムブルクを訪れた際には、ぜひ乗車して、その魅力を体験してみてください。

もう一度検索