ナガミボチョウジ

ナガミボチョウジ（長実母丁字）、学名 Psychotria manillensis は、アカネ科ボチョウジ属に属する常緑性の低木植物です。和名の「ナガミボチョウジ」は、同じボチョウジ属のボチョウジに比べ、果実がやや細長く見えることに由来すると考えられています。

特徴

本種は、自生地ではおよそ1メートルから2メートルの高さに生長します。葉は枝に対になってつき、長さ10～22センチメートル、幅5～10センチメートルの倒卵形をしています。葉の縁には鋸歯がなく滑らかで、葉の表裏両面に毛はありません。葉の最も幅広くなる部分が葉の先端寄りに位置する傾向が強いのが特徴です。

花は夏季に開花し、直径3～5ミリメートルの小さな白色です。花冠の先端は五つに裂ける形をしています。果実は長さ8～13ミリメートルの楕円形から、やや球形に近い形状をしており、最初は黄色いですが、熟すにつれて赤く変化します。この果実は、秋から翌年の春にかけて長い期間にわたり枝に残るため、比較的観察しやすい特徴の一つです。

近縁種との比較

同じボチョウジ属のボチョウジ（Psychotria rubra）と形態が似ていますが、いくつかの点で区別されます。ナガミボチョウジはボチョウジより樹高がやや低い傾向があります。葉においては、ナガミボチョウジの方が幅が広く、葉の表面の葉脈がより隆起して見えること、主脈と側脈の分岐する角度が広いこと、そして葉の裏側の葉脈の付け根部分にダニ室がない点で異なります。果実に関しては、ナガミボチョウジのものがボチョウジより縦長傾向ですが、個体差や形状の多様性があり、明確な区別は難しい場合もあります。染色体数は2n=84です。

生育環境と分布

ナガミボチョウジの自然分布域は、日本の鹿児島県トカラ列島から沖縄県を経て、台湾、フィリピンに及びます。国内では琉球列島に限定的です。沖縄本島では南部での生育が多く、北部では八重岳や辺戸岳の石灰岩地で見られます。

本種はアルカリ性の土壌を好み、石灰岩が基盤の地域の海岸から山地にかけての林内や林縁によく生育しています。市街地近くで見られることもあります。これは、同属のボチョウジが沖縄本島北部（名護岳など）の非石灰岩地で、酸性土壌を好むのとは対照的です。市街地近郊でも、秋から春にかけて長期間枝に残る果実を観察できます。

利用

分布域の一部地域では、ナガミボチョウジの枝葉が伝統的に利用されてきました。これは、ボチョウジと同様に、魔除けや地域の祭祀、儀式に用いられる習俗があるためです。

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