ナガ族

ナガ族は、インド北東部、特にナガランド州を中心に、ミャンマーとの国境沿いの丘陵地帯に暮らすモンゴロイド系の民族集団です。その人口は約200万人と推定されており、多様な文化や言語を持つ多数の部族によって構成されています。彼らは主にチベット・ビルマ語派に属するナガ諸語と呼ばれる様々な言語を話します。

ナガ族という名称は、彼らが伝統的に身につけていた耳飾りに由来すると考えられています。発音は「蛇」を意味するサンスクリット語のナーガに似ていますが、両者の間に直接的な関連はないとされています。

ナガ族は非常に多様性に富んでおり、アンガミ、アオ、コニャック、スミ、ロタなど、少なくとも23の主要な部族によって構成されています。これらの部族はそれぞれ独自の言語（方言）、慣習、服装、社会組織を持っています。かつては部族間での対立や戦争が頻繁に行われていました。

伝統的なナガ族の社会は、複合巨石文化の特徴を色濃く残しています。かつて盛んに行われていた部族間の戦争や首狩りは、単なる争いではなく、宗教的、社会的な意味合いを持っていました。集落は敵からの攻撃に備えて、しばしば見晴らしの良い丘陵の尾根に密集して営まれました。首狩りは若者が一人前になるための重要な成人儀礼（イニシエーション）であり、成功した者は勇者として認められ、結婚が許されました。勇者の証として特徴的な刺青が施されたり、首の形を模したペンダントを胸に下げたりしました。また、村に持ち帰られた敵の首には力が宿ると信じられていました。

政治形態は部族によって異なり、例えば北部ではコニャック族に見られるような首長制が伝統的で、首長が一夫多妻制をとることもありました。一方、南部のアンガミ族などではより民主的な話し合いによる集落運営が行われていたとされます。各村には、若者が首狩りの技術や部族の歴史、伝統的な知識を学ぶための「若者宿」が設けられていました。また、祭礼に用いられる大きな木鼓（ログドラム）なども大切に保存されていました。ロタ族のように、船のような独特な形状の屋根を持つ家に住み、大家族単位で生活する部族もいました。

彼らの主要な生業は焼畑農業であり、米を中心にアワやトウモロコシなどを栽培します。土地の肥沃度が低下すると、3年から4年の周期で耕作地を移動します。また、ミトン牛と呼ばれる家畜の飼育も行われており、ミトンは特に祭礼において重要な供犠として捧げられました。

伝統的な信仰は、山や森、岩などの自然物を崇拝対象とするアニミズムを基盤としていました。富を誇示し、村における名誉を高めるための祭りも盛んで、特に巨石を多くの人手で村の中心まで曳き運んで祀る大規模な祭礼は、共同体の結束を示す重要な機会でした。

19世紀末から20世紀にかけて、特にアメリカ人宣教師によるプロテスタントの伝道活動がナガ族の社会に大きな変化をもたらしました。その結果、2001年の時点ではナガ族の約90%がキリスト教徒となっており、各村にはキリスト教会が建てられています。これにより、かつての伝統的な信仰や首狩りなどの慣習は衰退しました。

第二次世界大戦後、ナガ族は統一された民族としての意識を高め、自治や独立を求める運動を展開しました。その結果、1963年にインド連邦内の州としてナガランド州が成立し、「ナガ族」という共通のアイデンティティがより意識されるようになりました。近年は、観光化による経済活性化にも力を入れており、毎年12月に州都コヒマ近郊で開催されるホーンビル・フェスティバル（通称サクラニ祭り）には、多くの観光客が訪れ、多様な部族の文化が紹介されています。

ナガ族は、長い歴史の中で培われた独自の文化と、近代化やキリスト教化による変化を経験しながら、現代社会の中でそのアイデンティティを保ち続けています。

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