ナスミス・ウィルソン

ナスミス・ウィルソンの歴史と業績

ナスミス・ウィルソン（Nasmyth, Wilson & Co., Ltd.）、通称ネイスミス・ウィルソンは、かつてイギリスのマンチェスターで存在した工作機械及び機関車の製造業者です。この会社は1836年にジェームス・ナスミス（James Nasmyth）によって創立され、マンチェスターの近郊パトリクロフトで活動を開始しました。最初の会社名はナスミス・ガスケル（Nasmyth, Gaskell & Co.）で、初期にはホルブルック・ガスケル（Holbrook Gaskell）が共同経営者として参画していました。

創立からの成長

工場はブリッジウォーター運河とリバプール・アンド・マンチェスター鉄道に隣接した特選の土地に設立され、その名をブリッジウォーター工場（Bridgewater Foundry）と名付けられました。1838年にはビジネスを拡大するためにヘンリー・ガーネット（Henry Garnett）とジョージ・ハンフリーズ（George Humphrys）が経営陣に加わり、その後も経営陣は変遷を重ねました。1848年にハンフリーズが退社し、1850年にはガスケルも去ったため、ナスミスの名を冠したJames Nasmyth & Co.に社名変更されました。

1856年にはジェームス・ナスミス自身も引退し、ヘンリー・ガーネットが代表となったこの企業は、彼の家族を経営陣に迎え入れ、パトリクロフト・アイアンワークス（The Patricroft Ironworks）への再命名を行います。1867年にはさらなる経営陣の変更が訪れ、最終的にはナスミス・ウィルソンとして広く知られるようになりました。

経営の変化と機関車製造

1930年の経済恐慌の影響により、ナスミス・ウィルソンの経営は次第に厳しさを増しました。1939年には機関車の製造を完全に中止し、イギリス機関車製造業者連合に設計やデザインを引き渡しました。会社はその後も蒸気ハンマー及び工作機械のメーカーとして事業を続けましたが、1940年には工場が軍需省に引き継がれることとなりました。1987年にはブリティッシュ・エアロスペースによって工場が買収され、1989年にはパトリクロフト工場が閉鎖されました。

現在、元の工場敷地の一部はビジネスおよび技術センターとして使われていますが、2009年までには中核的な建物が取り壊されています。

工作機械の製造

ナスミス・ウィルソンは、その製品の多くを1856年まで工作機械に注力しました。ジェームス・ナスミスが設計した蒸気ハンマーは、フランスで初めて製造され、ナスミスは特許を取得しました。蒸気ハンマー、プレーナー、型削り盤のほか、杭打ち機と油圧プレス機も設計し、製造を行いました。

機関車の生産

1840年代初頭、ナスミス・ガスケル時代に蒸気機関車の製造を開始し、1839年にはリバプール・アンド・マンチェスター鉄道向けに最初の2-2-2形機関車を製造しました。その後もグレート・ウェスタン鉄道向けの機関車等、多くの製品を手掛けましたが、機関車の製造は副業の位置付けであり、1938年までの製造台数はおよそ1,650両に留まりました。

日本との深いつながり

日本へは1886年から1908年の23年間に、183両の機関車が輸出されました。ナスミス・ウィルソンは日本市場で大変高い需要を持ち、特に官設鉄道向けの機関車が製造されました。最初に輸入された機関車の形式は0-6-0形タンク機関車で、後のB3クラス1100形に改称されたものです。さらに、同年には2-4-2形タンク機関車（後にA8クラス400形）の輸入も行われました。

このように、ナスミス・ウィルソンは日本の蒸気機関車の標準となる機関車の製造で特筆され、1908年には最後の輸入品を残したまま、日本市場との関係を終えることとなりました。

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