ナセル病院

ナセル病院の概要

ナセル病院（なせるびょういん）は、パレスチナ自治区のガザ地区南部に位置する医療機関です。その設立は1957年に遡り、当初は1940年代にイギリスの委任統治下で建立された陸軍兵舎を基に、隔離病院と熱病病院としての役割を果たしていました。この病院は1960年に開院し、エジプトの指導者ガマール・アブドゥル＝ナーセルにちなんで名付けられました。

歴史的背景

ナセル病院は設立以来、様々な歴史的出来事を経てきました。1972年に同病院は112床の収容能力を増加させるために一時的に閉鎖された後、1974年2月に再オープンしました。その後、1984年にイスラエル当局によって病院の整形外科が一度閉鎖され、同業務はアル・シファ病院へと移管されました。このように、ナセル病院は開院以来、地域の重要な医療機関として機能してきました。

2023年パレスチナ・イスラエル戦争

2023年、ナセル病院は350床の収容能力を持つ設計がされていましたが、同年10月から続くパレスチナ・イスラエル戦争により、その機能が著しく影響を受けました。

イスラエルは、ガザ地区内の病院がハマースの拠点であると主張し、攻撃を強化しました。ナセル病院周辺でもこのような圧力が高まり、特にハーンユーニスの戦闘が激化した2024年1月下旬には、病院周辺が包囲され、多くの患者や医療スタッフ、避難者が取り残される状況となりました。

イスラエル軍による対策

2024年2月13日には、イスラエル軍が病院の北門を破壊し、避難民に退去を命じました。医療スタッフや患者に対し、特定の条件のもとで残ることが認められたものの、病院側はこの決定に対し強い非難の声を上げました。

さらに、2月15日にはイスラエル軍がナセル病院に対し「正確かつ限定的な作戦」を行い、混乱を引き起こしました。ガザ保健省によると、これにより電力、水、食料、暖房の供給が失われ、多数の死傷者が出る事態となりました。

WHOが病院内部へのアクセスを求めたものの、これも拒否されました。その後、2月18日と19日に、重篤な状況にある患者の一部が他の病院へ移送されることが許可されました。

遺体の発掘と争い

ガザ地区の民間防衛当局は、2024年4月から病院の敷地内で遺体の発掘作業を始め、約200体の遺体を発見したと主張しました。これに対し、イスラエル軍はその主張に対して根拠がないと反論し、両者の間での対立が続いています。

ナセル病院は、地域の医療サービスを担う重要な機関であると同時に、複雑な政治的背景や戦争の影響を受けています。今後もこの病院がどのように運営され、地域住民に医療が提供されるかが注目されます。

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