ナターリア・プーシキナ

ナターリア・ニコラエヴナ・プーシキナ＝ランスカヤの生涯

ナターリア・ニコラエヴナ・プーシキナ＝ランスカヤ（旧姓ゴンチャロワ）は、1812年にロシアで生まれました。彼女は、ロシアを代表する詩人アレクサンドル・プーシキンの妻として歴史に名を残しています。彼女の生涯は、結婚、スキャンダル、そして再婚と、波乱に満ちたものでした。

幼少期とプーシキンとの出会い

ナターリアは1812年9月8日（旧暦8月28日）、カリアン村で誕生しました。当時、ナポレオン軍の侵攻を避けて、ゴンチャロフ家はモスクワから避難していました。父親は製紙業者の末裔、母親はモスクワの貴族出身でした。

16歳になったナターリアは、モスクワ社交界でその美貌が評判となり、アレクサンドル・プーシキンと出会いました。彼女の容姿は、スウェーデン貴族の血を引く祖母から受け継いだものとされています。

プーシキンとの結婚

プーシキンはナターリアに求婚しましたが、ナターリアの母親は当初、プーシキンの自由な思想が政府の迫害を受けるのではないかと懸念し、なかなか承諾しませんでした。しかし、最終的に1830年4月に求婚を受け入れ、同年5月6日に婚約が発表されました。結婚式はコレラの流行で1年延期され、翌1831年2月にようやく挙行されました。

結婚後、ナターリアは4人の子供（アレクサンドル、グリゴリー、マリア、ナターリア）をもうけました。プーシキンは首都での活動が多かったため、家族は田舎に住むことが多く、その間、二人は手紙でやり取りを交わしていました。プーシキンから妻への手紙は78通現存していますが、その内容は恋文というより、ユーモラスなものが多かったようです。プーシキンは『マドンナ』などの詩をナターリアに捧げています。一方、ナターリアからプーシキンへの手紙は、母親との連名で書かれたものが1通のみ残っています。

スキャンダルとプーシキンの死

1835年、ナターリアはフランスから来たジョルジュ・ダンテスと出会い、醜聞に巻き込まれます。ダンテスがナターリアに言い寄ったことが発端となり、プーシキンはダンテスに決闘を申し込みました。1837年1月27日の決闘でプーシキンは致命傷を負い、約35時間後に亡くなりました。

プーシキンの死後、ナターリアの行動は世間の批判の的となりました。彼女が贅沢な生活のためにプーシキンをたきつけていた、という意見も出ました。彼女の行動が、夫の才能や作品よりも、高価なドレスや宝石を優先していたかのように議論されたのです。

再婚と晩年

プーシキンの死後、ナターリアはロシア皇帝ニコライ1世と親しくなりました。噂では、彼女は皇帝の愛妾になったとも言われました。しかし、1843年、ナターリアは兄弟と同じ連隊に所属する士官ピョートル・ランスコイと出会い、1844年7月に皇帝の祝福のもと再婚しました。

ランスコイは皇帝の信頼も厚く、順調に出世しました。ナターリアはランスコイとの間にエリザヴェータとソフィアの2人の子供をもうけました。

1863年11月26日、ナターリアは51歳で亡くなりました。彼女の遺灰はアレクサンドル・ネフスキー大修道院に納められました。

関連項目

* ブロンズの天使 - さいとうちほの漫画。ナターリアを主人公に、プーシキンとの結婚から、ダンテスとの出会い、決闘、死別までを描いています。

ナターリア・ニコラエヴナ・プーシキナ＝ランスカヤの生涯は、彼女自身の美貌と、歴史的な出来事に翻弄されたものでした。彼女は、ロシアの歴史と文学に重要な足跡を残した女性として、記憶されるべきでしょう。

もう一度検索