ナチュラルキラー細胞

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の概要

ナチュラルキラー細胞（NK細胞）は、自然免疫において中心的な役割を果たしている細胞傷害性リンパ球の一種です。この細胞は、特に腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞の排除に重要です。NK細胞は、事前に特定の細胞に対して感作されなくても、その細胞を攻撃する能力を持つため、「ナチュラルな殺傷細胞」と名前付けられています。形態的には大形顆粒リンパ球とも呼ばれ、特有の特徴を持っています。

NK細胞の特性

NK細胞は、T細胞受容体（TCR）やT細胞マーカーであるCD3、B細胞受容体を発現していません。その代わりに、一般的にヒトではCD16（FcγRIII）とCD56という表面マーカーを持ち、マウスではNK1.1/NK1.2を発現しています。これらの細胞は、形状としては大きく、細胞質内には豊富な小胞体や顆粒を含み、迅速に活動できる状態で存在しています。NK細胞は、特定のタンパク質を新たに合成したり再構成したりせずに、即座に攻撃を行うことが可能です。

NK細胞の発見と歴史

NK細胞は1970年代初頭に発見されました。当初はT細胞が免疫化された腫瘍細胞を攻撃する能力に関する研究の中で、特定のリンパ球集団が腫瘍細胞を事前の準備なしに攻撃する様子が観察されました。この反応は従来の免疫モデルに合致しなかったため、一時は人工的な誤りと考えられました。しかし、1973年にはこの「ナチュラルキリング」活性が生物種を超えて広がることが確認され、特異な細胞系譜の存在が仮定されました。

Missing-self説

NK細胞は自己細胞を攻撃しないため、何を認識しているかが重視されます。この点に関して、1986年にKarreらが提唱したmissing-self説があります。この理論に基づくと、NK細胞はMHCクラスI分子の発現が低い細胞を見分けて攻撃します。MHCクラスI分子は自己の指標で、通常は全ての細胞表面に存在するため、これが欠けている場合、その細胞は異常であると認識され、NK細胞によって攻撃されるとされています。実際、腫瘍細胞やウイルス感染細胞では、MHCクラスI分子の発現が低下することがあり、これが攻撃のターゲットとなります。このため、NK細胞と細胞傷害性T細胞は相互に補完し合う関係にあると考えられています。

NK細胞の活性化機構

NK細胞は強力な細胞傷害機能を有しており、その活性は厳密に制御されています。さまざまな活性化シグナルが必要ですが、特に重要なものとして以下のものがあります。

1. サイトカイン：IFNα/βの存在はNK細胞の活性化に必須で、これらはウイルス感染細胞から分泌され、感染の存在を示すシグナルとされています。
2. Fc受容体：NK細胞は抗体のFc部位と結合する受容体を持っており、これにより抗体依存性細胞傷害（ADCC）を行います。
3. 活性化受容体と抑制性受容体：これらの受容体は標的細胞に特有のリガンドに結合し、NK細胞の反応を制御します。

細胞傷害機構

NK細胞の細胞質に含まれる顆粒は、パーフォリンやグランザイムと呼ばれるタンパク質を含み、細胞攻撃の中心的役割を果たします。パーフォリンは標的細胞の膜に孔を開け、グランザイムが細胞内部に侵入し、アポトーシス（計画的細胞死）を誘導します。これは、ウイルス感染細胞を排除するために重要です。NK細胞は、自己を保持しながら、外部からの脅威に対抗する非常に効果的な免疫システムの重要な構成要素です。

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