ナッカーレ

ナッカーレ:中近東の伝統的な一対の太鼓



ナッカーレ(Naqqāra)は、中近東地域に古くから伝わる、特徴的な形状を持つ打楽器です。その名前は、ナッカーラ、ナッカラ、ナッカレといった様々な表記や発音で知られています。この楽器は、まるで鍋や鉢を伏せたような、底が丸みを帯びた半球状の胴体を持つことから、「鍋型太鼓」あるいは「鉢型太鼓」と形容されます。中近東の豊かな音楽文化の中で育まれてきました。

楽器の構造は、胴体と革から成ります。胴体は、金属、木材、粘土など、製作地域や時代によって素材が異なります。胴体の上部、開口部には、音を生み出す源となる革が張られています。この革は、胴体の縁を通された紐やロープによって固定され、適切な張力をもって張られます。革の張り具合は、打楽器としての音色や音高に直接影響するため、重要な工程です。胴体の素材と革の張力の組み合わせが、響きと多様な音色を生み出します。

ナッカーレの演奏スタイルは、必ず二つの太鼓を一組として使用することです。この一対は大きさと音の高さが異なり、一方は低音、もう一方は高音を担当します。演奏者が扱いやすいように、二つの太鼓は紐で結びつけられたり、木製の枠にはめ込まれたりして一体化されます。これにより、演奏者は異なる音高の太鼓を巧みに叩き分け、複雑なリズムや旋律要素を組み合わせた演奏が可能となります。この一対での使用が、ナッカーレの音楽的可能性を広げています。

歴史的に、ナッカーレは打楽器の進化を理解する上で重要です。特に、ティンパニの原型の一つであると考えられています。ティンパニも半球状の胴体や革の張力調整に共通点があります。ナッカーレと同様に、キョスティンパニの原型と見なされますが、ナッカーレも現代の打楽器への発展過程を示す、歴史的に価値のある楽器と言えます。長い歴史を通じて、中近東の音楽文化で重要な役割を果たしました。

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