ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー

ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユーの物語

「ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー」という曲は、1980年代にプリンスがザ・ファミリーというバンドに提供した楽曲である。この曲の歌詞のモデルは、ザ・ファミリーのシンガーであるスザンナ・メルボインである。最初にこの曲が知られることとなったのは、1990年にシネイド・オコナーによってカバーされたおかげだ。彼女のバージョンは、欧米の音楽チャートを席巻し、多くのアーティストがこの名曲をカバーするきっかけともなった。プリンス自身も、アコナーのヒットに触発されてセルフ・カヴァーを行い、再び注目を集めた。

ザ・ファミリー版

ザ・ファミリーは、プリンスが手がけたファンク・バンドで、1985年にセルフタイトルのアルバムをリリースした。そこに収められた「ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー」だが、当初はシングルカットもされず、ほとんど話題にならなかった。それでも、この曲は後に大きな歴史を刻むことになる。

シネイド・オコナー版

アイルランド出身のシネイド・オコナーは、1989年にこの曲を自身のアルバム『蒼い囁き』に収録した。このアルバムは世界中でヒットを記録し、特にミュージック・ビデオもMTVで大人気となった。そのビデオは、オコナーの表情をクローズアップで捉え、感情が込められた歌唱が印象的だ。オコナーは、このビデオの中で流す涙について、母親との複雑な関係を反映させている。

オコナーの「ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー」は、全米・全英チャートともに1位を獲得し、さらに「ビルボード」の「Greatest Songs of All Time」で77位、VH1の「100 Greatest Songs of the 90s」では10位にランクインした。こうした成功を背景に、プリンス自身もこの曲をコンサートで披露するようになり、これがまた新たな注目を呼び起こすこととなった。

視覚作品としての印象

シネイド・オコナーのミュージック・ビデオは、主にパリで撮影された。監督はジョン・メイベリーであり、オコナーの表情や感情の変化を捉えることに重点が置かれている。ビデオが進むにつれ、オコナーの頬に二筋の涙が流れ落ちるシーンは記憶に残る。この涙は、彼女が歌う歌詞に込められた思いからくるものであり、作品全体に深い感動を与える。

1990年にはMTV Video Music Awardsで女性アーティスト初の最優秀賞に輝き、多くの賞賛を浴びた。この曲がアーティストとしての彼女の地位を確立し、評価の高い作品となったことは間違いない。2002年にはVH1の「The Greatest One-Hit Wonder」で18位、また2008年には「Final Countdown - Top 50 Heartbreakers」で第1位にも選ばれている。

多彩なカヴァー版

この楽曲は多くのアーティストにカバーされてきた。デューン（Dune）やノーザン・キングス（Northern Kings）などのアルバムに収録されており、様々なスタイルで再解釈され続けている。さらに、プリンスはオコナーの成功を受けて、自らもステージでこの曲を披露する機会が増えた。

このように、「ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー」は、さまざまな解釈と表現を通じて音楽史に大きな影響を与えてきた作品である。時代を超えた普遍的な感情が込められたこの曲は、今後も多くの人々の心に響き続けるだろう。

もう一度検索