ナッシング・ハズ・チェンジド〜オールタイム・グレイテスト・ヒッツ

ナッシング・ハズ・チェンジド〜オールタイム・グレイテスト・ヒッツ

『ナッシング・ハズ・チェンジド〜オールタイム・グレイテスト・ヒッツ』は、2013年に約10年ぶりに音楽活動を再開したデヴィッド・ボウイが、翌2014年の11月19日にリリースしたキャリア集大成とも言えるベスト・アルバムです。自身の活動50周年という節目を記念して企画された本作は、その広範な音楽世界を網羅する内容となっています。

この作品の最大の特色は、収録範囲の途方もない広さです。最新アルバムである2013年の『ザ・ネクスト・デイ』からの楽曲から始まり、なんと彼が「デイヴィー・ジョーンズ」名義で活動していた1964〜1966年という、真のデビュー期に発表された初期音源までさかのぼり、ボウイの約半世紀にわたる全キャリアを網羅しています。単にヒット曲を集めただけでなく、ファンにとって非常に価値の高い貴重な音源が多く含まれている点も特筆されます。

具体的には、公式にはCD化されていなかったシングル・バージョンや、これまで未発表だったミックス、特定のフォーマットでしか聴けなかったラジオ・エディットなどが多数収録されています。さらに、2000年頃にレコーディングされながらも当時発表が見送られ、2011年にインターネット上に流出したことで存在が知られるようになった幻の未発表アルバム『Toy』からの楽曲も複数収められています。こうしたレア音源の網羅に加え、本作のために特別にレコーディングされた新曲「Sue (Or In A Season Of Crime)」が収録されたことも大きな話題となりました。

この新曲「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、後にボウイの遺作となった2016年のアルバム『★（ブラックスター）』に、異なるバージョンで再録されて収録されています。このように、最新作から初期の音源、そしてリリース時点での最新曲までを含むことで、まさにデヴィッド・ボウイというアーティストの変遷と奥行きを一枚（あるいは複数枚）で感じられる構成となっています。

収録された全ての楽曲は、リリース当時の最新技術を用いてデジタル・リマスターが施されており、クリアで高音質なサウンドで楽しむことができます。アルバムは、様々なファン層やニーズに合わせて、3枚組デラックス・エディション、2枚組スタンダード・エディション、そして日本独自の1枚組ジャパン・エディションの3形態で発売されました。

特に3枚組デラックス・エディションは、曲順がユニークです。通常、ベスト盤は年代順に並べられることが多いですが、本作では最新作からの楽曲を冒頭に置き、そこから時間をさかのぼる形で初期の音源へと至るという、逆年代順の構成が採用されています。これは、ボウイの「何も変わっていない（Nothing Has Changed）」というタイトルに込められた皮肉とも取れるメッセージや、彼の音楽が常に現在進行形であるかのような感覚を表現しているのかもしれません。

『ナッシング・ハズ・チェンジド』は、デヴィッド・ボウイの驚異的な音楽的多様性と創造性の軌跡を一度に辿ることができる、初心者から長年のファンまで全ての音楽愛好家必携の作品集と言えるでしょう。彼の尽きることない探求心が生んだ数々の名曲やレア音源が、この一枚に凝縮されています。

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