ナワル・エル・サーダウィ

ナワル・エル・サーダウィの生涯と業績

ナワル・エル・サーダウィ（Nawal El Saadawi）は、1931年10月27日にエジプトのカリュービーヤ県に位置するカフル・タフラ村で生まれました。彼女は多才な作家であり精神科医であり、特に女性の権利向上を訴える人権活動家として広く知られています。エジプトだけでなく、イスラム社会全体における女性の地位改善を目指し、数々の著作を執筆しました。

彼女の幼少期には、教育長を務めた父親とフランス式学校で教育を受けた母親のもとで育ちました。しかし、その人生には早くも厳しい現実が立ちはだかります。彼女は6歳のときに割礼（FGM）の手術を受け、その苦痛を「全身を炎で焼かれるようだった」と表現しています。この体験が、後の彼女の思想に大きな影響を与え、アラブ社会における女性の権利問題を考えるきっかけとなりました。

1955年にはカイロ大学で薬学の博士号を取得し、そこから執筆活動を本格的にスタートさせました。彼女の最初の小説「あるフェミニストの告白」が1958年に出版され、エジプトの主流雑誌「ルズ・エル・ユスフ」に連載されました。これが彼女の名声を高める端緒となります。

1966年にはコロンビア大学に留学し、その後エジプトの保健省で健康教育局長を務めるなど、学術と実務の両面で活躍しました。しかし、彼女の率直な意見は政府からの反発を呼び、教育局長と編集主任の職を追われることになります。

また、彼女は1972年に発表した著書「女性と性」において、農村部で医師として活動した経験を反映させ、女性の健康や性に関する問題を取り上げ、社会的な議論を呼び起こしました。最終的にそれが原因で、彼女はエジプトを追放されるという運命を辿ることとなります。

1981年には、内政・外交を批判したために国家反逆罪で逮捕されましたが、アンワル・アッ＝サーダート大統領の暗殺によって運よく釈放されました。その後の1982年にはアラブ女性連帯機構を設立しましたが、1991年には政府からの圧力によってその活動は縮小を余儀なくされました。

1992年にはイスラム原理主義者からの脅威に直面し、アメリカに亡命。デューク大学で教鞭を執った後も、彼女の活動は続きました。1994年と1996年にはそれぞれ異なる大学から名誉博士号を授与され、エジプトに帰国しました。

彼女は2004年のエジプト大統領選に挑戦するも、選挙不正を理由に取り消す事態となります。後に、原理主義者から民事権を剥奪される危機にも直面しましたが、国家司法裁判所は彼女の権利を支持しました。

また、湾岸戦争ではアメリカや親米独裁政権を強く批判し、パレスチナ問題に関しても声を上げました。彼女の作品や活動は、今日でも多くの人々に影響を与えており、女性の権利の重要性を広める一翼を担っています。

日本語訳された作品

ナワル・エル・サーダウィの著作は多く、日本でもいくつかの作品が翻訳されています。代表作には『あるフェミニストの告白』や『女性に天国はあるのか』などがあります。彼女の作品は、ただのフィクションに留まらず、社会的メッセージが込められた重要な資料としても評価されています。

ナワル・エル・サーダウィは2021年3月21日に亡くなりましたが、彼女の影響力と理念は今後も多くの人々に生き続けることでしょう。

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