ナンブタカネアザミ

ナンブタカネアザミ（南部高嶺薊、学名: Cirsium nambuense）は、キク科アザミ属に分類される多年草です。日本の固有種であり、限られた地域にのみ分布する貴重な植物として知られています。

特徴

ナンブタカネアザミは、草丈が50cm程度まで成長します。茎には白い毛が密生しており、触ると柔らかい印象を受けます。茎につく葉（茎葉）は、基部が茎を抱き込むように付着し、葉の縁は深く切れ込んでおり、鋭いトゲが特徴的です。このトゲは、他の草食動物から身を守る役割を果たしていると考えられています。

花期は7月から8月にかけてで、茎の先端に斜め上向きから下向きに1個から3個程度の頭花をつけます。頭花は筒状花のみで構成されており、鮮やかな紫色をしています。まれに、オニアザミのように頭花がまとまってつくこともあります。

総苞は粘り気がなく、総苞片はタチアザミに似て細長く、先端がトゲ状になっています。花期にも根生葉が残っているのが特徴です。これらの特徴から、他のアザミ属の植物と区別することができます。

分布と生育環境

アザミ属の植物は、広い範囲に分布するものもあれば、ナンブタカネアザミのように極端に狭い地域にのみ生育するものもあります。ナンブタカネアザミは、本州の南東北地方、具体的には飯豊山、西吾妻山、朝日岳、月山、栗駒山などの日本海側の高山地域に分布しています。これらの山々の稜線部にある、風当たりの強い開けた草原に自生しています。

ナンブタカネアザミは、特定の環境に適応した植物であり、気候変動や環境破壊の影響を受けやすいと考えられています。そのため、生育地の保護が重要な課題となっています。

基準産地は飯豊山であり、この山はナンブタカネアザミの存在を知る上で重要な場所となっています。

その他

ナンブタカネアザミは、その美しい姿から、多くの登山者や植物愛好家に親しまれています。しかし、自生地は限られており、盗掘などによる減少も懸念されています。観察する際は、生育地を荒らさないように注意し、保護に協力することが大切です。

関連項目

アザミ
オニアザミ
ジョウシュウオニアザミ

参考文献

門田裕一 『日本のアザミ』「 ナンブタカネアザミ」

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