ニコラス・ベアトリゼ

ニコラス・ベアトリゼ（Nicolas Béatrizet, 1520年以前 - 1560年以降）は、16世紀のフランスを代表する版画家、エングレービング作家として知られています。主にローマで活動し、その作品は当時の芸術動向を伝える貴重な資料となっています。

生涯

ベアトリゼは、1520年以前にフランスのリュネヴィルで誕生したと考えられています。彼の作風から、ジョルジョ・ギージやアゴスティーノ・ヴェネツィアーノといった著名な版画家の弟子であった可能性が指摘されています。1540年から1560年までの間、ミケランジェロ・ブオナローティの指導の下でエングレービングの制作に励み、1560年以降にローマで生涯を終えました。

18世紀のイギリスの版画家ジョゼフ・ストラットは、ベアトリゼの作品の重要性について、それらが偉大な芸術家の作品の単なる模倣ではなく、当時の芸術様式を記録した貴重な資料であると評価しました。一方で、ストラットはベアトリゼの作品を「描画、キャラクター、効果、そして機械的制作において、優れたエングレービングに必要な条件を満たしていない」と批判的に評価しています。ベアトリゼは通常、「N. B. L. F.」と署名しており、彼の作品はかなりの数が現存しています。

ベアトリゼの作品は、ミケランジェロをはじめとする当時の巨匠たちの作品を版画として後世に伝える役割を果たしました。彼の作品は、当時の版画技術を理解する上で重要な手がかりとなるだけでなく、16世紀の芸術様式を研究する上で欠かせない資料となっています。彼の作品は、単なる複製ではなく、その時代特有の芸術的感性を反映しており、歴史的な価値を有していると言えるでしょう。

ベアトリゼの作品の特徴

ベアトリゼの作品は、緻密な線描と繊細な陰影表現が特徴です。特にミケランジェロの影響を受けた作品には、力強い人物表現やダイナミックな構図が見られます。彼の作品は、当時の版画技術を伝える貴重な資料であり、ルネサンス期の芸術家たちの作品を理解する上で重要な役割を果たしています。

ギャラリー

（ギャラリー部分は画像へのリンクのため省略）

参考文献

Michael Bury and Katherine Lockett, 'Béatrizet's Last Judgement, after Michelangelo, in the Courtauld Gallery', Print Quarterly, XXVIII, 2011, 266-71
Strutt, Joseph (1786). “Niccolo Beatrici”. A Biographical Dictionary Containing All the Engravers, From the Earliest Period of the Art of Engraving to the Present Day. 1. London: Robert Faulder. pp. 72–3

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