ニコラ・ド・クレシー

ニコラ・ド・クレシーは、1966年9月29日生まれのフランス人バンド・デシネ作家、原作者、イラストレーターです。彼の作品は、その卓越した画力と、複雑で皮肉の効いたシナリオで知られています。

経歴

1984年、マルセイユで応用芸術のバカロレアを取得後、アングレームの高等視覚芸術院に進学し、1987年に卒業しました。その後、ウォルト・ディズニー・アニメーション・フランスで画家/デザイナーとして勤務しますが、すぐにバンド・デシネの世界に専念することを決意。1991年に初の単行本『フォリガット』を出版し、批評家から高い評価を受けました。

1994年からは『天空のビバンドム』シリーズを開始。アングレームで出会ったシルヴァン・ショメと共同で『レオン・ラ・カム』シリーズを制作し、1998年にはその第2巻がアングレーム国際バンドデシネ・フェスティバルで最優秀アルバム賞を受賞しました。同時期には短編アニメーション『老婦人とハト』も制作しています。

2003年にはショメ監督のアニメーション映画『ベルヴィル・ランデブー』が公開されましたが、クレシーの作品を模倣したという論争が起こりました。専門家からは、アニメーションのスタイルがクレシーの作風に酷似しているとの批判が相次ぎました。

作風と特徴

クレシーのバンド・デシネ作品は、その多様な表現方法が際立っています。例えば、『天空のビバンドム』では、ページごとに異なる作画技法を駆使し、直截的な色彩を使用しています。一方、『ムッシュ・フルーツ』では、ラフなタッチのモノクロ作品で、テンポの良い展開を見せています。『プロソポピュス』は、セリフを一切使わないという実験的な試みを行っています。ルーヴル美術館とフュチュロポリスが共同編集した『氷河期』は、数々の賞を受賞しました。また、2006年には日仏共同出版の『JAPON』に、日本滞在の経験を基にした短編『新しき神々』を寄稿しました。この作品は後に加筆され、『あるおばけの日記』として出版されています。

2014年には、日本の漫画誌『ウルトラジャンプ』で、書き下ろし作品『プロレス狂想曲』を連載するなど、活動の幅を広げています。クレシーは、同世代の中でも傑出した作家として広く認知されています。

その他の活動

クレシーは、ヴィラ九条山レジデンス（京都）の2008年度招聘アーティストでもありました。この滞在経験は、彼の作品にも影響を与えています。

主な作品

シリーズ

天空のビバンドム (Le Bibendum Céleste、1994年-2002年、全3巻)
レオン・ラ・カム (Léon la Came、シルヴァン・ショメ原作、1995年-1998年、全3巻)
ムッシュー・フルーツ (Monsieur Fruit、1995年-1996年、全2巻)
サルヴァトール (Salvatore、2005年-2010年、全4巻)

単巻

フォリガット (Foligatto、1991年)
プロソポピュス (Prosopopus、2003年)
氷河期 (Période Glaciaire、2005年)
あるおばけの日記 (Journal d'un Fantôme、2007年)
プロレス狂想曲 (La République du Catch、2014年)

その他の作品

リスボン－空想旅行 (Lisbonne, Voyage Imaginaire、2002年)
ニューヨーク＝シュル＝ロワール (New-York-sur-Loire、2005年)

受賞歴

Prix du Lion, Centre belge de la Bande dessinée, 1992
Prix spécial du jury, Festival de Sierre (スイス), 1996
Prix Max und Moritz (優秀外国アルバム賞、ドイツ), 1993
Prix Alph'Art du Meilleur Album, Festival d'Angoulême, 1998
Prix de l'École de l'image d'Angoulême, 2001
Prix du journal Le Point, 2005
Prix des libraires de BD, 2006
Prix Virgin-Mégastore de la meilleure BD, 2006

日本語版

彼の作品は日本でも翻訳出版されており、以下の作品が刊行されています。

『天空のビバンドム』
『氷河期』
『サルヴァトール』
『レオン・ラ・カム』
『フォリガット』
* 『プロレス狂想曲』

ニコラ・ド・クレシーは、その独創的な作風と多岐にわたる活動で、バンド・デシネの世界に大きな影響を与え続けている作家です。

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