ニコン Nikon 1シリーズ

Nikon 1：ニコンの革新的ミラーレスカメラシステム

ニコンが2011年から2018年にかけて展開していたミラーレスカメラシステム「Nikon 1」は、デジタル一眼レフカメラとは異なるアプローチで開発されました。当時、ニコンはこれを「レンズ交換式アドバンストカメラ」と呼んでいましたが、後にはミラーレスカメラとして分類されています。

開発理念とシステム概要

「Nikon 1」は、デジタル時代における全く新しいカメラシステムとして、ゼロから設計されました。そのネーミングには、デジタル写真の可能性を追求し、先駆的な技術で市場をリードするというニコンの強い意志が込められています。

独自規格の「CXフォーマット」センサー（13.2mm×8.8mm）と「Nikon 1マウント」を採用することで、高画質と小型軽量化を両立しました。CXフォーマットはフォーサーズシステムよりも小さく、1インチセンサーよりもわずかに大きいサイズで、35mm判換算で約2.7倍の焦点距離となります。このシステムにより、高性能でありながら携帯性に優れたカメラシステムを実現しています。

ニコンのデジタル一眼レフカメラと同様に、手ぶれ補正機能（VR）はレンズ側に搭載されています。また、従来のニコンFマウントレンズも、別売のマウントアダプター「FT1」を使用することで装着可能です。

カメラ本体：Vシリーズ、Jシリーズ、Sシリーズ

「Nikon 1」シリーズは、主に3つのシリーズで構成されていました。

Vシリーズ: 電子ビューファインダー(EVF)を搭載した上位機種。高性能でプロフェッショナルな撮影にも対応できるモデルです。V1、V2、V3の3機種が発売されました。
V1は1010万画素、V2は1425万画素、V3は1839万画素と、世代を追うごとに画素数が向上しました。
高速なAF性能と連写機能を備え、AF追従連写速度はV1/V2では最大15コマ/秒、V3では20コマ/秒に達します。
V3ではタッチパネル式チルト液晶モニターとWi-Fi機能を搭載しました。
Jシリーズ: EVF非搭載の小型軽量モデル。高い操作性とデザイン性を重視したシリーズです。J1、J2、J3、J4、J5の5機種が発売されました。
J1は1010万画素、J5は2081万画素と、画素数の向上に加え、J5では裏面照射型CMOSセンサーを採用しました。
Jシリーズは、クリエイティブモードや、高速連写などの機能を搭載し、初心者から上級者まで幅広いユーザーに対応します。
Sシリーズ: エントリーモデルとして位置づけられたシリーズ。基本性能を備えながら、価格を抑えたモデルです。S1、S2の2機種が発売されました。
* Sシリーズもクリエイティブモードやスロービュー機能を搭載していました。

加えて、防水・防塵・耐衝撃性能を備えたタフネスモデル「AW1」も発売されました。

レンズラインナップ

「Nikon 1」システムには、様々な焦点距離と機能を持つ豊富なレンズが用意されました。単焦点レンズ、標準ズームレンズ、広角ズームレンズ、望遠ズームレンズ、そして高倍率ズームレンズがラインナップされ、撮影シーンに合わせて選択することができました。また、AWシリーズ専用の防水レンズも存在しました。

多くのレンズには手ぶれ補正機能（VR）が搭載されており、特に高倍率ズームレンズや望遠ズームレンズでは、安定した撮影を実現する上で重要な機能でした。

マウントアダプターとレンズ不具合問題

「Nikon 1」では、Fマウントレンズを使用するためのマウントアダプター「FT1」が提供されていました。このアダプターにより、ニコンの豊富なFマウントレンズ資産を活用することができました。ただし、オートフォーカスはAF-Sレンズに限定されていました。

「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」という標準ズームレンズでは、長期間の使用や頻繁なズーム操作によって不具合が発生する問題がありました。ニコンはこの問題に対して無償修理対応を実施しましたが、対応外の不具合も報告されており、ユーザーからの批判もありました。

結論

「Nikon 1」は、ニコンがデジタル一眼レフカメラとは異なるアプローチで開発したミラーレスカメラシステムでした。小型軽量で高速なAF性能、そして多様なレンズラインナップが特徴でしたが、レンズの不具合問題や市場の競争激化などにより、2018年に事実上開発終了となりました。しかし、「Nikon 1」は、ニコンのミラーレスカメラ開発の歴史において重要な役割を果たしたシステムと言えます。

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