ニコン慰安婦写真展中止事件

2012年に発生したニコン慰安婦写真展中止事件は、表現の自由や企業の責任について議論を呼んだ出来事です。ニコンが運営するニコンサロン（東京・大阪）で予定されていた写真展が、ニコン側の通告により中止となりました。

写真展の主催者である安世鴻は、開催実現のため東京地方裁判所に仮処分を申請。東京地裁はこれを認め、ニコンに対し会場の使用を命じました。これにより東京での写真展は実現したものの、大阪のニコンサロンでの開催は拒否されたため、別のギャラリーでの開催となりました。

ニコンは中止理由を「諸般の事情」と説明していますが、具体的な理由は明らかにされていません。報道によると、在日特権を許さない市民の会や主権回復を目指す会からの抗議活動、インターネット上でのニコン製品不買運動などが影響したとされています。

2012年12月25日、安世鴻はニコンに対し、1400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起しました。

2015年12月25日、東京地裁は安世鴻の訴えを一部認め、ニコンに対し110万円の支払いを命じる判決を下しました。裁判長は、ニコンの対応に正当な理由はなく、不法行為にあたると判断しました。

この事件は、企業が表現の自由を尊重し、社会的な圧力に屈しない姿勢を持つことの重要性を示唆しています。また、芸術作品の発表の場が、政治的な影響によって左右されることの問題点を浮き彫りにしました。

参考文献：
新藤健一『検証・ニコン慰安婦写真展中止事件』産学社、2012年。

関連項目：
表現の不自由展

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