ニッケイ新聞

ニッケイ新聞：ブラジル日系社会の歴史を伝える新聞

ニッケイ新聞（ポルトガル語: Jornal do Nikkey, Jornal Nippak）は、ブラジルで発行されていた日系人向けの新聞です。日本語とポルトガル語で情報発信を行い、日系社会の発展に大きく貢献しました。しかし、2021年12月18日をもって廃刊となりました。

新聞の概要

ニッケイ新聞は、サンパウロ市に本社を置くニッケイ新聞社によって発行されていました。日本語版は週5回発行される日刊紙で、ポルトガル語版は週刊紙として土曜日に発行されていました。この新聞は、「パウリスタ新聞」（1947年創立）と「日伯毎日新聞」（1949年創立）が1998年に合併・改名して誕生しました。平均8ページで構成され、公称発行部数は約1万部でした。紙媒体の他に、PDF版も提供されていました。姉妹紙として、週刊12ページのポルトガル語版「Jornal Nippak」も発行されていました。

サンパウロ市の本社には、日本語版編集部に20人弱、ポルトガル語版に約2人のスタッフが勤務し、配送部門を含めた社員数は約60人でした。南米やブラジル各地に通信員がおり、日本には東京支社を構えていました。

廃刊までの経緯

日本語の読み書きができる日系人の減少に伴い、ニッケイ新聞の経営は悪化していました。実際の部数は公称の半分以下にまで落ち込んでいたと言われています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による広告収入の激減が追い打ちとなり、2021年10月29日に同年いっぱいで廃刊することが発表されました。2021年12月18日をもって、ニッケイ新聞は70年以上の歴史に幕を閉じました。

しかし、新聞廃刊後、サンパウロで設立されたNPOが記者や購読契約を引き継ぎ、2022年1月に新たな日刊紙『ブラジル日報』が創刊されました。ニッケイ新聞の精神は、新たな形で受け継がれています。

編集方針

ニッケイ新聞は、以下のような編集方針を掲げていました。

ブラジル日系人社会の世論形成への寄与
ブラジルにおける日本人移民の歴史記事の掲載
日本文化の継承および日本語教育への関与
移民社会の変容に関する分析
日本への出稼ぎ（Dekassegui）の分析
日本への情報発信

これらの編集方針からもわかるように、ニッケイ新聞は日系社会と日本を結びつけ、文化交流を促進する役割を担っていました。

事業内容

ニッケイ新聞は、新聞発行だけでなく、様々な事業も展開していました。

イベント

2009年：第1回アマゾン移民、山田元さん講演会『トメアスーに生きる』
2013年：『ニッケイ杯数独大会2012』、数独考案者（ニコリ社長）鍜治真起氏来伯講演会
2014年：富士山写真展（静岡新聞社と共催、サンパウロ・オザスコ・レジストロ各市で開催）
2015年：春野恵子「浪曲ツアーinブラジル」

出版

ニッケイ新聞社は、書籍出版も積極的に行っていました。以下はその一部です。

『移民の父上塚周平伝荒野の人』（能美尾透、2007年）
『百年目の肖像―邦字紙が追った2008年』（2008年）
『ブラジル移民の創始者水野龍』（テレーザ・ハツエ・デ・レゼンデ、2008年、ポルトガル語版）
『ブラジル人のためのニッポンの裏技―暮らしに役立つ日本語便利帳―』（O Jeitinho no Japao para os brasileiros、松田真希子著）、イラスト満載の指差し会話帳
『日本人移住八十周年「アマゾン」』日本語版・ポルトガル語版（2012年）
『ブラジル略語集【日ポ両語】』（ブラジル日本商工会議所発行、2013年）
『一粒の麦もし死なずば～ブラジル日本移民レジストロ地方入植100周年～』（深沢正雪著、2014年）
『Aliança – A Terra da Cooperação』（2014年）「共生の大地アリアンサ～ブラジルに協同の夢を求めた日本人」（木村快著、同時代社、2013）のポルトガル語版
『笠戸丸移民未来へ継ぐ裔孫』（赤嶺園子著、2015年）

受賞歴

ニッケイ新聞は、その活動が評価され、数々の賞を受賞しています。

第2回（平成13年度＝2001年）海外日系新聞協会賞：「20世紀の残像－戦後移住者船出の瞬間」（写真展）
第3回（平成14年度＝2002年）海外日系新聞協会賞：「再浮上する日伯学園構想」（連載記事）
第4回（平成15年度＝2003年）特別賞：ペルーからの報告『フジモリ待望論はあるか』（連載記事）
第5回（平成16年度＝2004年）キャンペーン・企画・連載部門賞：「教科書－時代を映して変遷－」（連載記事）
第6回（平成17年度＝2005年）ニュース部門努力賞：「ブラジル日本文化協会役員選挙」（一連の関連報道）
第7回（平成18年度＝2006年）特別賞：『海を渡ったサムライたち－－邦字紙記者が見たブラジル日系社会――』（単行本）
第9回（平成20年度＝2008年）大賞：「日伯友好の礎大武和三郎～辞書編纂と数奇な生涯～」

これらの受賞歴は、ニッケイ新聞がブラジル日系社会においていかに重要な役割を果たしていたかを示すものです。

まとめ

ニッケイ新聞は、ブラジルの日系社会にとってかけがえのない存在でした。日系人の生活、文化、歴史を伝え、ブラジルと日本の架け橋となる役割を果たしてきました。廃刊は残念ですが、その精神は後継紙である『ブラジル日報』に受け継がれています。ニッケイ新聞の歴史は、ブラジル日系社会の歴史そのものと言えるでしょう。

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