ニューイングランドの暗黒日

ニューイングランドの暗黒日 (1780年5月19日)

1780年5月19日、アメリカ合衆国のニューイングランド地方で発生した「暗黒日」は、昼間にもかかわらず異常な暗さが観測された現象を指します。この日、昼間でも真っ暗になり、蝋燭の光が必要とされるほどの暗闇が広がりました。この現象の背景には、森林火災による煙や濃霧、雲量の増加が影響していると考えられています。

暗闇の範囲と目撃者の証言

暗黒日の影響を受けた地域は、北はメイン州ポートランドより北、南はニュージャージー州まで広がっていたとされています。しかしペンシルベニア州では観測されなかったことがのちに確認されています。アメリカ独立戦争の兵士であったジョゼフ・プラム・マーティンは、ニュージャージー州で目撃した暗闇はニューイングランドのそれほどはひどくなかったものの、十分に異常な暗さであったと述べています。特に、鳥たちが巣に戻るほどの暗さであり、人々が家庭で仕事をする際には蝋燭を使用せざるを得なかったとされています。

暗闇の経過とその影響

この珍しい事象の最初の報告はバーモント州のルパートからあり、既に日の出の時点で太陽の形が曖昧だったとされます。サミュエル・ウィリアムズ教授は、マサチューセッツ州のケンブリッジでの観測結果を報告しており、10時から11時の間に暗闇が始まり、その影響は翌日の深夜まで続いたと伝えられています。マサチューセッツ州の複数の地域でもそれぞれ異なる時間に暗闇が観測され、特に暗さが最も強いピークは昼の正午近くに訪れたとのことです。

また、14時にはイプスウィッチでまるで夜のように雄鶏が鳴き、自然が夜の到来を知らせていました。さらに、強い煤のような臭いが漂い、雨水には木の葉や灰が混ざっている様子も報告されています。

その他の異常現象

「暗黒日」が始まる直前の数日間、太陽は赤く見え、空も不自然な黄色がかっていたと言われており、暗闇の最中には煤煙が水面に漂う様子も観察されました。最終的に夜が到来すると、月は赤い光を放っていたとのことです。この太陽や月の異変は、当時の人々にとって不安の種となりました。

宗教的な解釈と文化的影響

当時の通信手段が未発達だったため、この異常現象について多くの人々が困惑し、さまざまな宗教的な解釈がなされました。有名なものでは、コネチカット州の議員アブラハム・ダベンポートが最後の審判の日について言及し、冷静に蝋燭を持ってくるよう求めたことが特に知られています。この出来事は翌世代に文学や宗教的な作品としても取り扱われ、ジョン・グリーンリーフ・ホイッティアなどの詩人によっても記録されました。

暗黒日の原因

この異常な暗闇の主な原因は、広範囲にわたる森林火災による煙が大気に影響を及ぼしたと考えています。研究によると、1980年当時の火災の痕跡が年輪に残されており、これが暗黒日の発生と関連付けられる証拠とされています。現代においても、その影響がどのように地域に広がったのかを探る研究が続けられています。

このように、1780年の「暗黒日」は、単なる自然現象以上の、歴史的・文化的な影響を持つ重要な出来事として記憶されています。

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