ニューイングランド複雑系研究所

ニューイングランド複雑系研究所（NECSI）

ニューイングランド複雑系研究所（New England Complex Systems Institute、略称：NECSI）は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジに設立された独立系の学術研究機関です。1996年にYaneer Bar-Yam（ヤニア・バー・ヤム）氏によって創設されたこの研究所は、「複雑系」と呼ばれる学際的な研究分野に特化しており、自然現象から社会システムに至るまで、相互に複雑に影響し合う要素から構成されるシステムの理解と解析を目指しています。

概要と研究アプローチ

NECSIは、生物学、物理学、経済学、社会学、計算機科学など、従来の学問分野の枠を超えた多様な視点から複雑系科学へのアプローチを試みています。特定の専門分野に留まらず、システム全体の振る舞いや、個々の要素間の相互作用によって emergent（創発）する現象に焦点を当てることで、気候変動、疫病の蔓延、金融市場の動向、都市の成長、紛争といった、予測困難で複雑な現実世界の課題に対する新しい理解と解決策の提示を目指しています。

研究所は独立した運営形態をとっており、比較的自由に研究テーマを設定し、長期的な視点で学際的な共同研究を推進できる環境を持っています。これにより、アカデミックな枠組みにとらわれない革新的な研究や、実社会への応用を目指した研究プロジェクトが可能となっています。

主要な研究者・共同研究者

NECSIには、複雑系科学の発展に貢献する国内外の著名な研究者が集結しています。中でも、『ブラック・スワン』の著者として知られる著名な思想家・統計学者であるナシーム・ニコラス・タレブ氏が在籍しており、研究所の研究活動に寄与しています。

その他、過去または現在において、研究者や共同研究者として研究所と関わりのある多分野の専門家が多数います。例えば、ゲーム理論でノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリング氏、量子計算科学者のセス・ロイド氏、計算機科学分野のアレックス・ペントランド氏、システム理論のピータ・センゲ氏、神経人類学のテレンス・ディーコン氏、分子遺伝学のチャールズ・カンター氏、心理学のジェローム・ケーガン氏、物理学のメヘラーン・カールダー氏、生態学のレス・カウフマン氏、進化生物学のギュンター・P・ワーグナー氏などが名を連ねています。また、日本の研究者である田坂広志氏も関わりを持っています。これらの研究者の多様な背景は、複雑系という広範な分野への学際的なアプローチをNECSIが重視していることを示しています。

さらに、アフィリエイト研究者として、トマソ・トフォリ氏、佐山弘樹氏、片桐文章氏なども研究所との協力関係を持っています。

関連事項

複雑系研究分野における先駆的な機関としては、ニューメキシコ州に位置するサンタフェ研究所がよく知られており、NECSIと同様に学際的なアプローチで複雑なシステムの研究を行っています。

外部リンク

NECSI 公式サイト
BarabasiLab
North Western Institute on Complex Systems
CABDyN Oxford
CNets Indiana
Center for Complexity Science, Warwick University

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