ニュージャックスウィング

ニュージャックスウィングについて

ニュージャックスウィング（New jack swing, NJS）は、1980年代中頃にアメリカで生まれ、その後1980年代末から1990年代初頭にかけて広まった音楽スタイルです。このジャンルは、主にミュージシャンであり音楽プロデューサーのテディ・ライリーによって創造されました。特に、キース・スウェットのメジャーデビュー楽曲「I Want Her」がこのスタイルを象徴するヒット曲として知られています。この音楽スタイルは、ワシントンDCのゴーゴーから影響を受けた特有のリズムが特徴です。

1980年代には、ブラック・コンテンポラリー、ソウル、R&B、ファンクといったジャンルが主流でしたが、同時にラップとヒップホップも急速に台頭し、音楽シーンに大きな影響を与えていました。この変化の中で、テディ・ライリーはファンク、ヒップホップ、ソウル、ゴスペルを融合した新たなサウンドを生み出しました。彼の作品は、特に重厚感のある打ち込みビートが特徴であり、ジャム＆ルイスのプロデュースとも強い関連があります。

テディによるプロデュース作品が1987年から次々とヒットし、音楽評論家やファンの注目を集めました。88年には、彼が結成したグループ「ガイ」がファーストアルバムを発表し、新しいスウィングビートの音楽が世に広がるきっかけとなりました。この時期、ボビー・ブラウンの「My Prerogative」も大ヒットとなり、テディのスタイルには多くのフォロワーが現れました。ニュージャックスウィングという言葉は、ジャーナリストのバリー・マイケル・クーパーによって初めて名付けられたとされています。

この音楽スタイルは、ブラックミュージック特有の重厚なグルーヴ感を保ちながら、軽快なリズムと親しみやすいメロディーを兼ね備えています。特に、ヒップホップ的手法が取り入れられたことにより、後のヒップホップ・ソウルの形成に貢献しました。また、ヒット曲に伴って、特有のダンスやファッション、ストリートカルチャーも生まれ、これらは多くの人々に支持されました。この人気はアメリカ国内だけでなく、ヨーロッパや日本にも広がり、R&Bチャートやポップチャートでの成功を収めました。

さらに、80年代にはイギリスのSoul II Soulなどのクラブミュージックも登場し、日本では「グラウンド・ビート」として知られる音楽スタイルも生まれました。こうした流れの中、テディ・ライリーやジャム＆ルイスは他のアーティストと影響し合い、ヒットチャートにおいてブラックミュージックブームを牽引しました。

1991年には、著名なミュージシャンであるマイケル・ジャクソンがテディのプロデュースでアルバムをリリースし、「リメンバー・ザ・タイム」が大ヒットしました。ニュージャックスウィングは、新しい世代の音楽としてダンスブームを引き起こし、その影響は広範囲に及びました。日本のJ-POPの作曲家たちも、このスタイルを取り入れるようになりました。

この音楽ジャンルは、一時的に多くのアーティストによって模倣されて市場に溢れたため、早期に飽きられる傾向が見られました。次第に新たなサウンドが模索され、1990年代中頃には衰退していきましたが、ダンスフロアでの支持は依然として根強く、2010年代後半にはブルーノ・マーズのアルバム『24K Magic』が再び注目を浴び、ニュージャックスウィングのリバイバルとも言える状況を生み出しました。

リズムと機材

ニュージャックスウィングのリズム構成は、主に十六分三連符のスウィング・ビートで成り立っています。カイル・ウエストが1985年にテディから聞いたクイックなテンポは、94～105BPMだったとされています。主に使用されていた機材には、AKAIのリヴァーブやローランド808ドラム・マシーン、サンプラー、シンセサイザーなどが含まれており、これにより独特のサウンドが作り出されました。音楽評論家の鈴木啓志は、テディのサウンドについてその新しさを称賛しています。

主なアーティスト

ニュージャックスウィングに貢献したアーティストには、テディ・ライリーの他に、LA＆ベイビーフェイスやジャム＆ルイス、カシーフなどがいます。これらのアーティストは、それぞれのスタイルを持ちながらも、ニュージャックスウィングの発展に寄与してきました。

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