ニューマーケット競馬場

ニューマーケット競馬場：イギリス競馬の心臓部

ニューマーケット競馬場は、イギリス・サフォーク州ニューマーケット町に位置する、世界的に有名な競馬場です。ロンドンから北北東約103キロメートルにあり、世界最大の競馬町とも呼ばれるニューマーケットの中心として、長きに渡りイギリス競馬を牽引してきました。

この競馬場の歴史は古く、1660年頃にはすでに競走コースが存在した記録が残っています。現在も使用されているローリーマイルコースはその起源をこの頃に遡ることができ、その後、1809年には2000ギニー、1814年には1000ギニーというイギリスクラシック三冠競走の重要なレースが初めて開催されました。1876年にはジュライカップ、1877年にはチャンピオンステークスといった主要な競走も加わり、ニューマーケット競馬場の地位はますます確固たるものとなりました。

第一次世界大戦と第二次世界大戦中には、ダービーやオークスといった主要な競走がニューマーケット競馬場で代替開催されました。これは、戦時中の状況下においても、競馬の継続と伝統の維持にニューマーケット競馬場が重要な役割を果たしたことを示しています。また、セントレジャーステークスやサセックスステークスなど、ヨーロッパを代表する権威ある競走の代替開催も行ったことで、その重要性が広く認識されました。

コース形態：2つの個性的なコース

ニューマーケット競馬場は、3つの直線を組み合わせた芝コースを特徴としています。夏場以外のシーズンに使用されるローリーマイルコースと、夏場限定で使用されるジュライコースの2つのコースがあり、それぞれ逆「く」の字型をしています。ローリーマイルコースは全長約4023メートル、ジュライコースは約3420メートルです。

ローリーマイルコースは、1マイル2ハロン（約2012メートル）地点で大きく右にカーブし、ジュライコースと分かれます。ゴール手前300ヤード（約274メートル）からは「ザ・ディップ」と呼ばれる急な上り坂が続き、馬場全体に変化に富んだ地形が独特の戦略性を生み出しています。このコース名は、チャールズ二世の愛馬オールドローリーに由来します。

ジュライコースは、1マイル1ハロン（約1809メートル）地点で緩やかな右カーブを行い、その後は平坦なバンバリーマイル（約1609メートル）に入ります。バンバリーマイルのみを使用するレースも行われ、コースのバリエーションによって多様な競走が展開されます。ローリーマイルコースとジュライコースが共有する前半直線部分は「セザレヴィッチコース」または「ビーコンコース」、ジュライコースの後半直線部分は「バンバリーマイルコース」と呼ばれることもあります。

主要開催：伝統と格式を誇るイベント

ニューマーケット競馬場では、年間を通して多くの重要な競走が開催されます。その中でも特に重要な開催をいくつか挙げます。

クレイヴン開催 (Craven Meeting)： 4月中旬に行われるこの開催は、イギリスの平地競走シーズンの開幕を告げる伝統的なイベントです。2日間の日程で、3歳クラシック路線の前哨戦として注目されるクレイヴンステークス（牡馬）とネルグウィンステークス（牝馬）が開催されます。この開催は1771年に第6代クレイヴン男爵の支援によって始まりました。

ギニーズフェスティバル (Guineas Festival)： 5月上旬に行われ、ニューマーケット競馬場の一年で最も重要な開催の一つです。2000ギニーと1000ギニーという、イギリスクラシック三冠競走の重要な2つのレースがここで行われます。

ジュライフェスティバル (July Festival)： 7月に行われる3日間の開催で、ジュライコースが使用されます。ジュライカップ、ファルマスステークス、プリンセスオブウェールズステークスなど、重要な競走が数多く行われます。

ケンブリッジシャー開催 (The Cambridgeshire Meeting)： 秋に行われる開催で、直線コースのローリーマイルコースが使用されます。ハンデ戦のケンブリッジシャーハンデキャップがメインイベントですが、ミドルパークステークス、チェヴァリーパークステークス、サンチャリオットステークスといったG1競走も開催されます。

かつてはチャンピオンズデーも開催されていましたが、スケジュール調整のためアスコット[[競馬場]]に移転し、その代わりにフューチャー・チャンピオンズデーが創設されました。フューチャー・チャンピオンズデーは、2歳馬の重賞競走に焦点を当てたイベントです。

ニューマーケット競馬場は、歴史、伝統、そして多様なコースと競走によって、イギリス競馬の中心的存在として君臨し続けています。その歴史と格式は、これからも多くの競馬ファンを魅了し続けるでしょう。

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