ニューロコミュニケーター

ニューロコミュニケーターとは

ニューロコミュニケーターは、産業技術総合研究所が開発した革新的な技術で、脳波を測定しその結果をもとに意思を伝達する装置です。特に、筋萎縮性側索硬化症（ALS）などによって身体的な自由が制約された方々に新たなコミュニケーション手段を提供します。

開発の背景と目的

2010年3月、産業技術総合研究所の長谷川良平研究グループがこの技術を開発しました。それ以来、重度の運動機能障害を持つ方々が脳波を通じて意思表示を行えるよう、様々な改良と実験が重ねられてきました。

基本的な仕組み

使用者の前には、パソコンモニターが設置され、そこには8種類のピクトグラム（絵カード）が表示されます。これらの選択肢の中から、使用者が伝えたり希望したりするメッセージを選ぶという形式です。脳は、選びたい絵カードに注目する際に独自の情報処理を行いますが、頭皮で記録された脳波からはその微細な違いを抽出することは困難です。そこで、ピクトグラムをランダムに点滅させることで、使用者の脳波の変化を観測し、特定のメッセージを抽出する手法が採用されています。

P300波形の利用

ニューロコミュニケーターでは、P300と呼ばれる脳波の変化を利用しています。何かに注目し、注目している対象に変化があった場合、その反応が約300ミリ秒後に表れます。この電位変化を解析することによって、使用者が選びたいピクトグラムを特定します。最終的に、そのメッセージはCGアニメキャラクターによって音声で伝えられます。

開発と試験の進行状況

ニューロコミュニケーターの研究は、2010年度から始まり、様々なモニター実験を行ってきました。初期の試作機から改良を重ね、2011年には新たなデザインのヘッドギアに更新され、ソフトウェアもより進化しました。2013年にはオープンラボでその効果が実証され、続く数年にわたり臨床試験が続けられました。

現在の展望と将来性

今後は、装置の価格を10万円以下に抑えることが目標とされており、より広範な使用に向けた取り組みが進められています。また、開発された脳波計や解析システムは、家庭での健康管理や教育、スポーツ、さらにはロボット制御などの分野への応用が期待されています。ニューロマーケティングの分野でも、消費者の潜在意識を探る研究に役立つ可能性があります。

知的財産

この技術は、「意思伝達支援装置及び方法」という特許や脳波測定用電極の意匠、商標登録もされています。これらの取り組みは、今後の進展に向けた重要な基盤となっています。

まとめ

ニューロコミュニケーターは、コミュニケーションが難しい方々に対して新しい希望を提供する技術として、今後の医療や支援環境において重要な役割を果たすことが期待されています。技術の進歩が、さらなる実用化に寄与することを願っています。

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