ニュー・ワールズ

新しい世界を切り拓いた『ニュー・ワールズ』の歴史

『ニュー・ワールズ』（New Worlds）は、イギリスのSF誌であり、その影響力は1970年代まで続きました。1936年、モーリス・K.ハンソンによる同人誌『ノヴァ・テラ』として始まり、後に編集長に就任したジョン・カーネルの手によって1939年に名称変更されました。その後、1946年に商業誌として本格的に出版されるようになります。

創刊から商業化まで

最初の号は注目を集め、特にクラークやテンプルなどの著名な作家の作品が掲載されました。第1号の巻頭作はモーリス・ヒュージの「The Mill of the Gods」で、カーネルは商業的な成功を狙って出版戦略を練りました。1946年の最初の商業刊行では、15,000冊が刷られ、売り上げも上向きになりましたが、出版社ペンデュラム社の破産により、途方に暮れることになります。

1948年には新たにノヴァ社が設立され、季刊誌として発行が続けられます。この時期、ジョン・ウィンダムなどの著名な作家の作品が多く掲載され、雑誌としての立名を築きました。

ムアコックの時代

1964年、経営の混乱から雑誌はロバーツ&ビンター社に渡り、マイケル・ムアコックが編集長に就任します。ムアコックはその後の展開で『ニュー・ウェーブ』と呼ばれる実験的な文学運動の中心的存在となります。彼は、セックスシーンを含む作品を掲載し、論争を巻き起こしましたが、同時に売上も増えていきました。

中でも、ムアコックが推し進めた「実験的な作品」は多くの注目を集め、多様な作家たちに受け入れられました。特に、バラードやエリスンに見られる新しい作品のスタイルは、大きな話題となり、過去の枠を超える要因となりました。ムアコックは「新しい前衛的な役割」を模索し続け、作品の多様性を追求しました。

ニュー・ウェーブとその影響

雑誌の発行は時代と共に変化し、その中で拡がる「ニュー・ウェーブ」の思想は、多くの作家に新たなインスピレーションを提供しました。1964年から1966年にかけて、さまざまな評論が発表され、これらの作品が次第にSFの概念を変えていく力となりました。『ニュー・ワールズ』はこの運動の中心として、ジャンルの境界を越えた文学的探求を推進しました。

しかし、1970年代には経営難から定期刊行が終了し、その後は不定期に雑誌が発行され続けました。2012年にはオンライン版が登場しましたが、収益不足により終了しました。

影響と評価

『ニュー・ワールズ』の創刊からの歩みを通じて、多くの作家や作品が誕生し、SF文学の発展に寄与しました。例えば、バラードの作品は読者から高い評価を受け、主流文学にも影響を与える要因となりました。また、ムアコックの編集方針は様々な作風を受け入れ、新しい詩的表現やテーマの探求を促進しました。

総じて、『ニュー・ワールズ』は単なるSF雑誌を超え、文学界における重要な試みとして記憶されています。その影響力は、今日のSFやファンタジー文学の基盤を築いたとされ、多くの作家に続く道を開きました。

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