ニンギョウがニンギョウ

『ニンギョウがニンギョウ』は、西尾維新が手掛けた小説で、講談社ノベルスから単行本として刊行されました。この作品は、雑誌『メフィスト』に掲載された短編に書き下ろしを加え、構成されています。主人公である「私」と、23人の妹、そして1人の姉という特異な家族構成が物語の軸となります。

この小説は、西尾維新の作品群の中でも特に異彩を放っており、その特徴は抽象的な表現と、一筋縄ではいかない物語展開にあります。作者自身が「わかりやすさ」を追求した「戯言シリーズ」とは対照的に、「わかりにくさ」を追求した作品であると述べている点も、特筆すべき点でしょう。

あらすじ

物語は、四度目の死を迎えた十七番目の妹のために、主人公である「私」が映画館へ向かう場面から始まります。

ニンギョウのタマシイ

映画館へ向かう途中、「私」は熊の少女と出会います。携帯電話を持たない「私」に、彼女は携帯電話を差し出し、電話の相手はなんと亡くなったはずの十七番目の妹でした。妹の謝罪を受け入れた「私」は、再び映画館への道を歩き始めます。その道中で山小屋を発見し、そこで二十一番目と二十三番目の妹が暮らしていたことを知ります。入れ違いに落胆するも、2人の生存を確認した「私」は、再び映画館を目指します。映画館でチケットと共に渡された荒縄に戸惑いますが、再会した熊の少女から、天井から吊り下げられて逆さまに映画を鑑賞するためのものだと教えられます。映画鑑賞後、「私」は熊の少女と再会を約束し、映画館を後にします。

タマシイの住むコドモ

映画鑑賞から1週間後、「私」の右足が腐敗し始めます。五番目の妹に連れられ、「私」は人体交換屋の元へ向かいます。そこで、熊の少女と再会し、右足を診察された結果、妊娠していることが判明します。出産か中絶かの選択を迫られるも、決断できずにいると、熊の少女が子を育てると提案します。手術は無事に終わり、右足は元通りになりました。しかし、帰路につく途中で右目が腐り落ちていたことに気付きます。

コドモは悪くないククロサ

5年ぶりに目覚めた「私」は、十一番目の妹から来客があることを告げられます。玄関で待っていたのは熊の少女で、言葉学園商店街へ買い物に付き合ってほしいと頼まれます。商店街で脳髄が売られている店で、「私」は朝食に食べていたスープが、自身の喪失感だったのではないかと気づきます。熊の少女は大量の脳髄を購入し、「私」は荷物持ちとして連れてこられたことを知ります。

ククロサに足りないニンギョウ

新聞で熊の少女の生息する山が炎上したことを知った「私」は、彼女が二十四番目の妹であると直感します。一番目の妹に知らせようと、ピアノの黒鍵が鍵となることに気づき、右眼窩に鍵を差し込むと、一番目の妹と再会できました。しかし、二十四番目の妹は違うと言われ、「私」は熊の少女を探しに映画館へ向かいます。そこで熊の少女と再会しますが、彼女は妹ではなく、「私」の姉であることを告げます。

特徴

本作は、不条理と矛盾に満ちた文体で物語が展開されますが、各話の最後に衝撃的なオチが用意されています。これらのオチは、読者に大きな驚きと混乱をもたらし、物語の奇妙さを際立たせています。

「ニンギョウのタマシイ」では、映画館に出かける必要がなかったというオチ。
「タマシイの住むコドモ」では、問題が解決したと思ったら別の問題が起きるというオチ。
「コドモは悪くないククロサ」では、買い物の同行を頼まれた理由が、ただの荷物持ちだったというオチ。
「ククロサに足りないニンギョウ」では、妹だと思っていた少女が、実は姉だったという衝撃的なオチ。

書籍情報

2005年9月6日 ISBN 4-06-182453-8
ニンギョウのタマシイ（小説現代臨時増刊号『メフィスト』、2004年9月号）
タマシイの住むコドモ（小説現代臨時増刊号『メフィスト』、2005年1月号）
コドモは悪くないククロサ（小説現代臨時増刊号『メフィスト』、2005年5月号）
ククロサに足りないニンギョウ（書き下ろし）

外部リンク

『ニンギョウがニンギョウ』西尾維新｜講談社ノベルス

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