ネパールの行政区画
ネパール連邦民主共和国は、7つの州、77の郡、753の地方自治体、そして6,680の区から成る4層構造の行政区画を持っています。
現在のネパールの地方行政は、2015年9月20日に公布された新憲法と、2017年3月10日の新地方自治体法に基づいて運営されています。かつては王制下で中央集権的な行政体制でしたが、新憲法によって連邦制が採用され、各州に議会が設置されました。これに伴い、地方自治体も再編されました。
州（प्रदेसहरू Pradeshharū、Province）は、ネパールにおける最上位の行政区画です。2015年の新憲法によって7つの連邦州が誕生し、各州には一院制の州議会（प्रदेश सभा Pradesh Sabha）が置かれています。
郡（जिल्ला Jillā、District）は、州の下に位置する行政区画で、合計77郡があります。行政執行機関として地区調整委員会（जिल्ला समन्वय समिति、District Coordination Committee (DCC)）が置かれ、郡議会（जिल्ला सभा）も設置されています。
郡の歴史は古く、1806年から1837年の間に10郡が設置されたのが始まりとされています。その後、1885年から1901年の間に32郡に分割され、1951年のラナ王朝終焉後には34郡となりました。1962年に開始されたパンチャーヤト制では75郡に再編され、郡パンチャーヤトは県と都市型自治体の中間的な位置づけとなりました。1990年のパンチャーヤト制終了後は、郡開発委員会（District Development Committee (DDC)）が設置され、事実上最上級の行政区画となりました。2015年の新憲法によって、郡開発委員会は郡調整委員会へと改編され、権限がやや縮小されました。現在は77郡となっています。
郡の下には、2021年4月時点で753の地方自治体（市町村）があります。地方自治体は、人口規模に応じて大都市、準大都市、基礎自治体、農村型自治体（ガウパリカ）の4種類に分類されます。このうち、大都市、準大都市、基礎自治体の3つは都市型自治体（市）と総称されます。
都市型自治体（नगरपालिका Nagarpālikā、Municipality）は、都市化が進んだ自治体の総称で、合計293市（2021年4月時点）があります。2017年3月10日までは、これらの分類はなく、一律に基礎自治体と呼ばれていました。
大都市（महानगरपालिका Mahānagarpālikā、Metropolitan Municipality）：都市圏人口が30万人以上であることなどが条件で、首都カトマンズなど6市があります。
準大都市（उपमहानगरपालिका Upmahānagarpālikā、Sub-metropolitan Municipality）：都市圏人口が15万人以上であることが条件で、ジャナクプルなど11市があります。
基礎自治体：大都市・準大都市のどちらでもない都市型自治体で、人口基準は地形によって異なり、山間部では1.7万人以上で成立します。2020年4月現在は276市となっています。
都市型自治体は、1950年代から人口規模の大きい集落を町と呼んで村と区別していました。1962年のパンチャーヤト制開始後は、町は村より上位の区画となり、パンチャーヤト制廃止後は都市自治体（町、市とも表記）に改編されました。2015年までに190市、2017年3月の改革前には217市となり、改革後は293市となっています。
ガウパリカ（गाउँपालिका Gāum̐pālikā）は、農村型自治体（Rural municipality）とも呼ばれ、直訳すると村議会となります。2017年3月10日に村開発委員会（VDC）に代わって設置されました。設置当初は481村でしたが、都市型自治体への昇格によって減少し、2020年4月時点では560村となっています。
区（वडा Wada、Ward）は、地方自治体の下にある最小の行政単位で、複数の集落から構成されています。2017年3月10日の行政改革で、6,680区に再編されました。
1962年、マヘンドラ国王が制定した憲法により、県、郡、町、村の各パンチャーヤト議会から成るパンチャーヤト制（पञ्चायत、Panchayat）が導入されました。県、郡、町は間接民主制、村は直接民主制でした。しかし、国王に政治的権力が集中した非民主的なパンチャーヤト制は、1990年の民主化運動（ジャナ・アンドラン）によって廃止されました。
パンチャーヤト制廃止後は、開発区域 - 県 - 郡 - 基礎自治体/村開発委員会 - 区の5層構造となりました。ただし、開発区域と県には自治権がなく、中央政府と郡政府が直結していたため、実質的には郡 - 基礎自治体/村開発委員会 - 区の3層構造でした。
開発区域（विकास क्षेत्र Bikās Kshetra、Development Region）は、ネパールにかつて存在した行政区画で、セクター省庁の広域開発計画に用いられました。自治権のない最上位の行政区画で、各開発区域には3県（極西部のみ2県）が所属していました。
1972年に既存の県を取りまとめるために設置され、初めは4区でしたが、1982年に5区となりました。1990年代の行政改革で開発区域には上院議員枠が設けられましたが、2015年の新憲法で県と共に廃止されました。
県（अञ्चल Añcal、Zone）は、ネパールにかつて存在した行政区画で、1972年に開発区域が設置されるまで最上位の行政区画でした。14県があり、郡を管轄していました。
1962年2月にパンチャーヤト制の一部として設置され、郡から選出された議員で県パンチャーヤトが運営されていました。1967年の憲法改正で県パンチャーヤトは廃止され、1990年のパンチャーヤト制廃止に伴い行政権を喪失しましたが、郡を取りまとめる区分として使用され続けました。2015年の新憲法で開発区域と共に廃止されました。
村開発委員会（गाउँ विकास समिति Gāum̐ Vikās Samiti、Village Development Committee (VDC)）は、郡の下に設けられた行政区画で、最盛期には4千以上のVDCがありました。都市化が進んだ地域では各VDCを統合して基礎自治体を形成したため、徐々に数を減らしていきました。2017年3月10日に農村型自治体（ガウパリカ）に置き換えられる形で廃止されました。
ネパールの都市の一覧
* ISO 3166-2:NP
1] [Wikipedia
概要
現在のネパールの地方行政は、2015年9月20日に公布された新憲法と、2017年3月10日の新地方自治体法に基づいて運営されています。かつては王制下で中央集権的な行政体制でしたが、新憲法によって連邦制が採用され、各州に議会が設置されました。これに伴い、地方自治体も再編されました。
現行の行政区画
州
州（प्रदेसहरू Pradeshharū、Province）は、ネパールにおける最上位の行政区画です。2015年の新憲法によって7つの連邦州が誕生し、各州には一院制の州議会（प्रदेश सभा Pradesh Sabha）が置かれています。
郡
郡（जिल्ला Jillā、District）は、州の下に位置する行政区画で、合計77郡があります。行政執行機関として地区調整委員会（जिल्ला समन्वय समिति、District Coordination Committee (DCC)）が置かれ、郡議会（जिल्ला सभा）も設置されています。
郡の歴史は古く、1806年から1837年の間に10郡が設置されたのが始まりとされています。その後、1885年から1901年の間に32郡に分割され、1951年のラナ王朝終焉後には34郡となりました。1962年に開始されたパンチャーヤト制では75郡に再編され、郡パンチャーヤトは県と都市型自治体の中間的な位置づけとなりました。1990年のパンチャーヤト制終了後は、郡開発委員会（District Development Committee (DDC)）が設置され、事実上最上級の行政区画となりました。2015年の新憲法によって、郡開発委員会は郡調整委員会へと改編され、権限がやや縮小されました。現在は77郡となっています。
地方自治体
郡の下には、2021年4月時点で753の地方自治体（市町村）があります。地方自治体は、人口規模に応じて大都市、準大都市、基礎自治体、農村型自治体（ガウパリカ）の4種類に分類されます。このうち、大都市、準大都市、基礎自治体の3つは都市型自治体（市）と総称されます。
都市型自治体
都市型自治体（नगरपालिका Nagarpālikā、Municipality）は、都市化が進んだ自治体の総称で、合計293市（2021年4月時点）があります。2017年3月10日までは、これらの分類はなく、一律に基礎自治体と呼ばれていました。
大都市（महानगरपालिका Mahānagarpālikā、Metropolitan Municipality）：都市圏人口が30万人以上であることなどが条件で、首都カトマンズなど6市があります。
準大都市（उपमहानगरपालिका Upmahānagarpālikā、Sub-metropolitan Municipality）：都市圏人口が15万人以上であることが条件で、ジャナクプルなど11市があります。
基礎自治体：大都市・準大都市のどちらでもない都市型自治体で、人口基準は地形によって異なり、山間部では1.7万人以上で成立します。2020年4月現在は276市となっています。
都市型自治体は、1950年代から人口規模の大きい集落を町と呼んで村と区別していました。1962年のパンチャーヤト制開始後は、町は村より上位の区画となり、パンチャーヤト制廃止後は都市自治体（町、市とも表記）に改編されました。2015年までに190市、2017年3月の改革前には217市となり、改革後は293市となっています。
農村型自治体（ガウパリカ）
ガウパリカ（गाउँपालिका Gāum̐pālikā）は、農村型自治体（Rural municipality）とも呼ばれ、直訳すると村議会となります。2017年3月10日に村開発委員会（VDC）に代わって設置されました。設置当初は481村でしたが、都市型自治体への昇格によって減少し、2020年4月時点では560村となっています。
区
区（वडा Wada、Ward）は、地方自治体の下にある最小の行政単位で、複数の集落から構成されています。2017年3月10日の行政改革で、6,680区に再編されました。
過去の行政区画
パンチャーヤト制（1962年 - 1990年）
1962年、マヘンドラ国王が制定した憲法により、県、郡、町、村の各パンチャーヤト議会から成るパンチャーヤト制（पञ्चायत、Panchayat）が導入されました。県、郡、町は間接民主制、村は直接民主制でした。しかし、国王に政治的権力が集中した非民主的なパンチャーヤト制は、1990年の民主化運動（ジャナ・アンドラン）によって廃止されました。
パンチャーヤト制廃止後
パンチャーヤト制廃止後は、開発区域 - 県 - 郡 - 基礎自治体/村開発委員会 - 区の5層構造となりました。ただし、開発区域と県には自治権がなく、中央政府と郡政府が直結していたため、実質的には郡 - 基礎自治体/村開発委員会 - 区の3層構造でした。
開発区域（1972年 - 2015年）
開発区域（विकास क्षेत्र Bikās Kshetra、Development Region）は、ネパールにかつて存在した行政区画で、セクター省庁の広域開発計画に用いられました。自治権のない最上位の行政区画で、各開発区域には3県（極西部のみ2県）が所属していました。
1972年に既存の県を取りまとめるために設置され、初めは4区でしたが、1982年に5区となりました。1990年代の行政改革で開発区域には上院議員枠が設けられましたが、2015年の新憲法で県と共に廃止されました。
県（1962年 - 2015年）
県（अञ्चल Añcal、Zone）は、ネパールにかつて存在した行政区画で、1972年に開発区域が設置されるまで最上位の行政区画でした。14県があり、郡を管轄していました。
1962年2月にパンチャーヤト制の一部として設置され、郡から選出された議員で県パンチャーヤトが運営されていました。1967年の憲法改正で県パンチャーヤトは廃止され、1990年のパンチャーヤト制廃止に伴い行政権を喪失しましたが、郡を取りまとめる区分として使用され続けました。2015年の新憲法で開発区域と共に廃止されました。
村開発委員会（VDC、1990年 - 2017年）
村開発委員会（गाउँ विकास समिति Gāum̐ Vikās Samiti、Village Development Committee (VDC)）は、郡の下に設けられた行政区画で、最盛期には4千以上のVDCがありました。都市化が進んだ地域では各VDCを統合して基礎自治体を形成したため、徐々に数を減らしていきました。2017年3月10日に農村型自治体（ガウパリカ）に置き換えられる形で廃止されました。
関連項目
ネパールの都市の一覧
* ISO 3166-2:NP
脚注
1] [Wikipedia
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