ネフェルタリ

ネフェルタリについて

ネフェルタリ（Nefertari）、またはネフェルトイリは、古代エジプト第19王朝の王妃であり、ラムセス2世の最初の正妃としてその名が知られています。彼女のフルネームはネフェルタリ・メリトエンムト（Nefertari-Meritenmut）で、名前の一部には「美しい人」と「女神ムトに寵愛されし者」という意味が込められています。彼女は神后としても尊敬を受け、多くの富を得ていたとされています。

出自と家系

ネフェルタリの出身に関する情報は明確ではありません。彼女は「王の娘」の称号を持っておらず、おそらくエジプト貴族の一員であった可能性があります。考古学者のティルディスレイは、ネフェルタリの墓で発見された装飾品に前王朝のファラオであるアイのカルトゥーシュが用いられていたことから、彼女がアイの血縁である可能性を示唆しています。

生涯と業績

ネフェルタリは、ラムセス2世が王位にある間に、彼の数多くの妃の中で唯一、自らの神殿を持つ王妃でした。彼女は13歳の時にラムセスと結婚し、以後長男アメンヘルケペシュエフをはじめとする6人の子供を儲けました。彼女の正妃としての在位は25年ほどであり、公的記録の最後の登場は在位24年目の行事に関するものでした。

また、ネフェルタリは王妃の谷（QV66）に埋葬され、その墓は非常に保存状態が良く、「古代エジプトのシスティーナ礼拝堂」とも称されています。この墓は、彼女の地位や生活様式を反映した豊かな装飾が施されています。

ネフェルタリの地位と建築物

アブ・シンベルの地にある小神殿は、ネフェルタリと彼女が崇拝する女神ハトホルを称えるために建設されました。彼女はこの小神殿の中でも特別な地位を持ち、ファラオと同じ大きさの像が構築されています。これは正妃の地位が高まる新王朝時代の珍しい例であり、特にラムセス2世にとっていかに重要な存在であったかを物語っています。彼女の死の後、神殿の完成は見られませんでした。

子供たちと後継者の問題

ネフェルタリは、王子アメンヘルケペシュエフ、プレヒルウォンメフ、メリラー、メリアトゥム、そして王女メリトアメン、へヌトタアウィの合計6人の子供を育てましたが、彼らは誰一人として王位につくことはありませんでした。ラムセス2世の後継者は、他の妃であるイシスネフェルトの子供となりました。

ネフェルタリの影響

ラムセス2世の即位前から付き添っており、彼女に対して深い敬愛を抱いていたことが、アブ・シンベルの壁画や碑文に示されています。「偉大なる王の妻、ネフェルタリ・メリトエンムト。太陽は彼女のために輝き、彼女に命と愛を与えた」と記録されていることが、それを裏付けています。

一方、ラムセス2世の他の妃たちもそれぞれ重要な役割を果たし、ネフェルタリとともにエジプト歴史に名を残しました。

墓の発掘

ネフェルタリの墓は1904年にエルネスト・スキャパレッリによって発掘されました。この墓は第19王朝時代のもので、装飾の美しさで知られています。内部には大きな入り口や副室、そして主玄室があり、四本の柱と三つの貯蔵室に華やかな装飾が施されています。

ネフェルタリの生涯や業績は、彼女が古代エジプト史においていかに重要な存在であったかを物語っています。彼女の存在なしには、ラムセス2世の治世やその文化的影響を語ることはできません。

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