ネムリユスリカ

ネムリユスリカ

ネムリユスリカ（学名：Polypedilum vanderplanki）は、ハエ目ユスリカ科に属する昆虫で、アフリカの半乾燥地帯に生息しています。その幼虫は、乾燥した環境下でも驚異的な生存能力を持つことで知られています。

特徴

ネムリユスリカの幼虫は、岩盤のくぼみにできた水たまりを生活の場としています。水たまりの底に溜まった有機物（デトリタス）で巣を作り、それを餌としています。この地域では雨が少なく、水たまりは乾燥しやすい環境にあります。他のユスリカの幼虫は乾燥すると死んでしまいますが、ネムリユスリカの幼虫は、水たまりが干上がると乾燥した状態で生存し続けます。そして、雨が降ると水分を吸収し、短時間で蘇生するという驚くべき能力を持っています。

この乾燥状態でも死なずに復活できる能力は、クリプトビオシスと呼ばれています。クリプトビオシス状態に入った幼虫は、再び水分を吸収するまで休眠状態を続けます。幼虫は、孵化直後を除き、どの段階でもクリプトビオシス状態になることができます。また、乾燥と蘇生は何度でも繰り返すことが可能です。しかし、卵、蛹、成虫には乾燥耐性はありません。このクリプトビオシス能力を持つ昆虫は、現在確認されている限りではネムリユスリカのみです。

クリプトビオシス状態では、幼虫の乾燥重量の約20%がトレハロースで占められています。乾燥過程で体内で合成されるトレハロースは、細胞膜やタンパク質の構造を維持する役割を果たします。また、トレハロースは高濃度になるとガラス化しやすい性質を持っており、体内でガラス化することで生体成分の変性を防いでいます。

その他

2014年2月には、国際宇宙ステーションで、乾燥させたネムリユスリカ幼虫に水を加えて蘇生させる実験が日露共同で行われました。微小重力下でも幼虫は問題なく蘇生し、2週間後には蛹や成虫になることが確認されています。成虫の寿命は個体差があるものの、1～3日程度です。

利用

ネムリユスリカのクリプトビオシスを利用した研究も進められています。幼虫を常温で乾燥保存し、品質劣化を抑えた状態で、養殖魚や観賞魚の生きた餌として利用できる可能性が検討されています。

脚注

関連項目

クリプトビオシス

外部リンク

ネムリユスリカのふしぎな世界へようこそ（農業生物資源研究所）
* 極限乾燥耐性生物ネムリユスリカのゲノム概要配列を解読－生物がカラカラに乾いても死なないメカニズムの解明へ－ 2014年9月12日 農業生物資源研究所プレスリリース

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