ネロ指令

ネロ指令の概要と背景

ネロ指令は、1945年3月19日にナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーが発出した「ライヒ領域における破壊作戦に関する命令」の通称です。この指令は、壊滅的な状況にあるドイツのインフラを自ら破壊することを進言するもので、焦土作戦と呼ばれる破壊行為の一環です。その名は、ローマ皇帝ネロがローマの大火を引き起こしたとの伝説に由来しています。ヒトラーは、連合軍の進攻に対して絶望を抱え、自国の敗北を予見していました。

背景とヒトラーの考え方

1945年の初頭、ドイツは連合軍に対して圧倒的な劣勢にありました。ヒトラーの期待通りに戦局が進まない中で、彼は国民が「無条件降伏」を受け入れることに対して強く抵抗を示しました。自らの指導力に対する疑念から、ドイツは滅びるべきだと考えるようになっていたのです。ヒトラーは、戦争に負けた場合には国民も共に滅びるべきだと考え、そのための手段として焦土作戦を考案しました。

ヒトラーは過去にも散発的に焦土作戦を命じており、例えば1944年のパリ解放時には、解放前にパリの重要なインフラを壊滅させるよう命じました。しかし、その命令は守られずコルティッツは降伏しました。ヒトラーの命令はしばしば無視されており、彼の現実逃避ともいえる状況は続いていました。

ネロ指令の発令と実行

1945年3月19日に発令されたネロ指令は、連合軍の占領に備えてドイツのインフラを破壊することを命じるもので、実行責任者は軍需大臣アルベルト・シュペーアです。しかしシュペーアは、この破壊命令に愕然とし、ヒトラーへの信頼を失ってしまいました。彼は、産業や国民生活に対する影響を考え、命令の中止を訴えましたが、ヒトラーはこれに応じませんでした。

シュペーアはヒトラーから与えられた独占的な権限を使って、命令を守らないよう将軍達に働きかけました。その結果、指令は実行されませんでした。しかし、ヒトラーはこの状況を知らず、指令の実行が行われていないことを知ったのは4月22日のことでした。この時、シュペーアは自らの行動をヒトラーに報告しました。

結末

ヒトラーはこの状況に激怒し、シュペーアに帰ることを許可しましたが、その後の彼自身の運命も待ち構えていました。4月30日には、自ら命を絶つこととなり、ドイツは5月7日に連合国に降伏しました。そして、5月23日には、彼の後ろ盾となっていた政府の閣僚たちが逮捕される事態となります。ネロ指令が下された日からわずか42日後に、このすべては終焉を迎えました。

まとめ

ネロ指令は、絶望的な状況下でのナチス・ドイツが選んだ極端な行動の象徴であり、命令の背景にはヒトラーの強い思想と国民に対する冷徹な視点がありました。戦争の果てに国を壊滅させる選択をした彼の指導力と、それに従わなかった軍の動きは、歴史の中でも重い教訓として残ることとなります。

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