ネヴィル・モット

サー・ネヴィル・フランシス・モット：写真乳剤からモット絶縁体まで

サー・ネヴィル・フランシス・モット (1905年9月30日-1996年8月8日) は、20世紀を代表するイギリスの物理学者の一人です。彼の研究は、写真技術から固体物理学の基礎理論にまで及び、現代物理学に多大な貢献を残しました。1977年には、磁性体と無秩序系の電子構造に関する理論的研究によって、フィリップ・アンダーソン、ジョン・ハスブルック・ヴァン・ヴレックと共にノーベル物理学賞を受賞しています。

写真乳剤の謎を解き明かす

モットの初期の重要な業績の一つに、写真乳剤の感光過程に関する理論的解明があります。これは、ガーニーとモットによって共同で研究されたもので、ガーネ・モット理論として知られています。この理論は、光が当たった際に写真乳剤中のハロゲン化銀結晶内で電子と正孔が発生し、それらが移動して潜像を形成する過程を、物理化学的に説明することに成功しました。これは、写真技術の基礎をなす重要な発見であり、モットの研究者としてのキャリアを決定づけるものとなりました。

モット絶縁体の概念

モットは、金属酸化物や金属錯体における電子間の相互作用についても深く研究しました。特に、電子間の強いクーロン斥力によって、本来金属として振る舞うべき物質が絶縁体となる現象を解明し、「モット絶縁体」という概念を確立しました。これは、現代の物性物理学において重要な概念であり、多くの物質の電気的性質を理解する上で欠かせないものとなっています。この研究は、材料科学やデバイス開発においても大きな影響を与えています。

キャヴェンディッシュ研究所所長としての貢献

モットは、1954年から1971年まで、ケンブリッジ大学の著名な研究機関であるキャヴェンディッシュ研究所の所長を務めました。この間、彼は研究所の運営に尽力し、多くの優秀な研究者を育成しました。キャヴェンディッシュ研究所は、多くのノーベル賞受賞者を輩出していることで知られていますが、モットのリーダーシップもその成功に大きく貢献したと考えられています。

国際的な活動と受賞歴

モットは、国際的な学会活動にも積極的に参加し、1953年には国際理論物理学会・京都の議長を務めるなど、日本の物理学界とも交流がありました。彼の業績は高く評価され、ヒューズ・メダル、ロイヤル・メダル、コプリ・メダル、ファラデー・メダルなど、数々の権威ある賞を受賞しています。これらの受賞は、彼の研究の重要性を示すものであり、物理学界における彼の地位を確固たるものにしました。

多彩な著書

モットは、数多くの著書も出版しており、その中には『初歩の量子力学』、『衝突の理論』（H.マッセイとの共著）、『金属物性論』（H.ジョーンズとの共著）、『金属と非金属の物理』など、物理学の基礎から最先端の研究成果までを網羅したものが含まれています。さらに、自伝である『科学に生きる―ネビル・モット自伝』も出版されており、彼の波乱に満ちた研究生活の一端を知ることができます。

まとめ

サー・ネヴィル・フランシス・モットは、写真乳剤からモット絶縁体、そして数々の優れた業績と指導力によって、20世紀の物理学に大きな足跡を残しました。彼の研究は、現代科学の様々な分野に影響を与え続けており、今後もその重要性は失われることはありません。彼の生涯と業績は、未来の科学者たちに大きなインスピレーションを与え続けるでしょう。

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