ネ330 (エンジン)

ネ330とは

ネ330は、1940年代に三菱重工業が手がけていた航空機向けのターボジェットエンジンです。このエンジンは、第二次世界大戦中における航空技術の発展の一環として開発が進められましたが、実際の試験運転に至ることはありませんでした。特に重要なのは、試作機が完成したものの、運転テスト前に空襲によって破壊されてしまった点です。これにより、2号機以降の製作も戦争の終結と共に頓挫し、開発は終了を迎えることとなりました。

開発の背景

ネ330の開発は、戦時中の日本がドイツの技術を取り入れていく中で進行しました。特に、遣独潜水艦作戦を通じて取得したドイツ製ジェットエンジンに関する資料が、重要な設計情報源となりました。1944年11月には、これらの情報をもとにエンジンの設計計画が見直され、新たに発注が行われました。この時期に発注されたエンジンの中では、最も高い推力を持つことが期待されていました。

日本では、1944年8月から名古屋の研究所において設計作業が開始され、同年10月には設計が完了しました。その後、1945年4月には試作1号機の組み立てが完了。しかし、その直後に訪れた空襲で、試作機は大破してしまいました。これにより、2号機から4号機の開発が進められましたが、終戦までに完成することは叶いませんでした。

技術的特性

ネ330は、その設計において非常に先進的な特性を持つことが期待されていました。ターボジェットエンジンとしては他に類を見ない性能を有することが予想されていたため、航空機の航続距離や速度の向上に寄与することができると考えられていました。しかし、実際に運用されることはなく、技術としてそのままの形で世に出ることはありませんでした。

諸元

具体的な諸元については、当時の資料が乏しく、詳細なデータを導き出すことは難しいものの、設計目標としての推力や燃料効率の向上が挙げられます。これらのデータは、今後の航空エンジン技術における指標ともなる可能性がありました。

参考文献

• - 中田金一「10.ガスタービン(内燃機関展望)」『日本機械学会誌』第55巻、第398号、日本機械学会、202-204頁、1952年3月5日。
• - 日本機械学会 編『日本機械工業五十年』日本機械学会、1949年3月。
• - 松岡久光『みつびし航空エンジン物語』アテネ書房、1996年1月10日。

このように、ネ330は二度と実現しなかった航空機用エンジンとして、戦時中の技術開発の 苦悩と悲劇を象徴する存在となっています。その後の航空エンジンの進化においても、その試みは少なからず影響を与え続けています。

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