ノルト・ダービー

ノルト・ダービー：ハンブルクとブレーメンの宿命の対決

ノルト・ダービーは、ドイツ北部の二大都市、ハンブルクとブレーメンに本拠地を置くハンブルガーSVとヴェルダー・ブレーメンの間で行われる、激しいライバル関係にあるサッカーの試合です。FCバイエルン・ミュンヘンが圧倒的な強さを誇るドイツにおいて、ノルト・ダービーは北ドイツにおける覇権を争う重要な戦いとして、特別な意味を持っています。

歴史的背景

ハンブルガーSVは、同じハンブルクを本拠地とするFCザンクトパウリともライバル関係にありますが、ザンクトパウリの多くが下部リーグに所属していたため、「ハンブルク・ダービー」は比較的稀にしか行われません。そのため、ハンブルクとブレーメンは95kmも離れているにもかかわらず、ハンブルガーSVにとって最大のライバルはヴェルダー・ブレーメンと見なされています。試合当日には、両クラブのフーリガンによる衝突を警戒し、警察官が増員されるなど、異様な雰囲気に包まれます。

ノルト・ダービーの歴史は古く、1927年にブレーメンのホームスタジアムで初めて開催されました。この記念すべき一戦は、アウェーのハンブルガーSVが4-1で勝利を飾っています。1963年にブンデスリーガが創設されると、1シーズンに2回のダービーマッチが開催されるようになり、両チームの対戦はさらに激しさを増しました。ただし、1980-81シーズンはブレーメンが2部リーグに降格したため、ダービーは開催されていません。

1982年には、悲しい事件も起きました。ハンブルガーSVのサポーター集団「ザ・ライオンズ」が、ブレーメンのサポーターを襲撃し、そのサポーターは翌日、怪我のために亡くなりました。これは、サッカーにおける暴力が原因でドイツで初めて死者が出た事件として、サッカー史に刻まれています。

他の都市で行われるダービーマッチと同様に、ノルト・ダービーの根底には、ハンブルク市とブレーメン市のライバル意識が存在します。ハンブルクはドイツ最大の港湾都市であり、ブレーメンもまた重要な港湾都市であるため、経済的な競争関係もダービーの激しさに拍車をかけています。

2008-09シーズンの激闘

2008-09シーズンには、わずか18日間で4度もダービーが開催されるという、異例の事態となりました。当時、ブレーメンはリーグ戦で中位に位置し、5シーズン連続で獲得していたヨーロッパカップ戦の出場権を逃す可能性がありました。一方、ハンブルガーSVは、26年ぶりのリーグ優勝を目指していました。さらに、両チームはDFBポカールとUEFAカップの両方で準決勝に進出するという、奇跡的な状況が重なりました。

2009年4月22日に行われたDFBポカール準決勝は、120分間の激闘の末、1-1の同点で決着がつかず、ダービー史上初のPK戦に突入しました。このPK戦を4-2で制したのはブレーメンでした。4月30日には、UEFAカップ準決勝のファーストレグが開催され、ハンブルガーSVが1-0で勝利し、貴重なアウェーゴールを手にしました。しかし、5月7日に行われたセカンドレグでは、ハンブルガーSVが先制したものの、その後ブレーメンが3点を奪取し、3-2と逆転勝利。アウェーゴール差でブレーメンが決勝に進出しました。そして、5月10日にはリーグ戦で両者が対戦し、ブレーメンが2-0で勝利したことで、ハンブルガーSVの優勝の望みは事実上潰えました。

このように、2008-09シーズンのノルト・ダービーは、両チームのサポーターにとって忘れられない激闘として、語り継がれています。

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