ノースライト (小説)

『ノースライト』について

横山秀夫の長編推理小説『ノースライト』は、2004年から2006年にかけて旅行雑誌『旅』に連載され、2019年に新潮社から書籍として刊行された作品です。この小説は、主人公である建築士が自身が設計した家にまつわる不思議な事件を追う物語です。特に注目すべき点は、作品は「週刊文春ミステリーベスト10 2019」で国内部門第1位を獲得したことです。

あらすじ

主人公の青瀬稔は、一級建築士としてのキャリアを持ち、吉野夫妻から信濃追分の土地で「住みたい家」の設計を依頼されます。彼が設計した「Y邸」は、後に雑誌で特集されるなど、稔の代表作となります。しかし、引き渡しから4ヶ月後、青瀬は「Y邸」に住むはずの吉野夫妻が行方不明であることに気づきます。

不審に思った青瀬は、建築事務所の所長である岡嶋と共に現地を訪れると、家の中は無人で、電源の入った留守番電話とブルーノ・タウト作の木製椅子だけが残されていました。青瀬はこの椅子が所持者である吉野夫妻の家族にどのような意味を持つのかを探ろうとします。彼は役場職員を通じて吉野一家の転入状況を調査しますが、転入の形跡は見つかりませんでした。

青瀬は吉野一家に顔を合わせたときの違和感を思い返し、さらには吉野を追う謎の男も現れることになります。物語は、建築士としての青瀬の知識や経験を生かしつつ進行し、建物にまつわる様々な秘密が明らかになっていく様子が描かれます。

登場人物

• - 青瀬稔: 演 - 西島秀俊

一級建築士であり、「Y邸」の設計者。自らの作品にかける情熱と義務感から、失踪事件に関与する。

• - 岡嶋昭彦: 演 - 北村一輝

青瀬の大学時代からの友人で、「岡嶋設計事務所」の所長。青瀬をサポートしながら事件に関わる。

• - 吉野陶太: 演 - 伊藤淳史

「Y邸」の施主だが、作品の完成とともに消息を絶つ。

• - 村上ゆかり: 演 - 宮沢りえ

青瀬の元妻で、物語に微妙な陰影を与えるキャラクター。

その他、青瀬の家族や関係者、事件の調査に協力する記者など、多彩なキャラクターが物語を彩ります。

テレビドラマ化

この小説は、2020年にNHK総合で西島秀俊主演によりテレビドラマ化されました。全2回にわたり放送され、作品の深みを映像として表現しました。ドラマは、原作のスリリングな要素を忠実に再現し、視聴者に強い印象を与えました。

また、作品の撮影地としては、実際に信濃追分に「Y邸」が建設され、その映像美も話題に。放送後は高い評価を受け、第58回ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞も受賞しました。

結論

『ノースライト』は、建築という観点から物語を進める新しいスタイルのミステリー小説です。家族愛、友情、失踪の背後に潜む真実を追い求める姿を通じて、深い人間ドラマが描かれています。どの世代の読者にも響くテーマを持ち合わせた本作は、ただのミステリーにとどまらず、読み応えのある作品となっています。

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