ノース・ダラス40

概要

1979年に公開されたアメリカ映画『ノース・ダラス40』は、プロアメリカンフットボールの世界に切り込んだコメディドラマです。元ダラス・カウボーイズの選手であったピーター・ジェントが著した自伝的な色彩の濃い小説を原作としており、プロスポーツの華やかな舞台の裏側にある現実や、アスリートたちの苦悩、そして組織との軋轢をシニカルかつユーモラスに描いています。監督はテッド・コッチェフが務め、主人公をニック・ノルティが演じました。単なるスポーツ映画に留まらず、プロフェッショナルな世界の人間ドラマとしても評価されています。

あらすじ

物語の舞台はテキサス州ダラス。プロフットボールチーム「ノース・ダラス・ブルズ」に所属するフィル・エリオットは、8年のキャリアを持つベテランのワイドレシーバーです。しかし、彼はチームを率いるB・Aヘッドコーチの管理的な方針に反発することが多く、さらに古傷である膝の故障にも悩まされており、満足に試合に出場できない日々を送っていました。グラウンドでは輝きを失いつつありましたが、彼は選手仲間との絆や、フットボールへの情熱を心の内に秘めています。

そのシーズン、ノース・ダラス・ブルズは快進撃を続け、ついにリーグ優勝をかけた大一番、強豪「シカゴ・モロダーズ」との対決を迎えることとなります。注目の決戦を目前に控えたあるパーティーで、フィルはシャーロットという魅力的な女性と出会います。二人は惹かれあい、やがて愛し合うようになります。彼女の存在は、フィルの荒んだ日常に一筋の光をもたらします。

一方、チームのオーナーであるハンターは、ブルズの優勝に異常なまでの執念を燃やしており、コーチ陣、特にB・Aヘッドコーチやジョンソン・コーチに激しいプレッシャーをかけます。オーナーの期待に応えようと、コーチ陣はチームの強化を図るべく、様々な新たな手法を導入します。最新のトレーニング機器を用いた徹底的な体力づくりや、選手のコンディションや能力をコンピューターで詳細に管理するなど、科学的・管理的なアプローチを推し進めます。個々の選手の人間性よりもデータやシステムを優先するこうした姿勢に、フィルは再び反発心を抱きます。こうした態度がチーム内の軋轢を生み、フィルはますます孤立していくかに見えました。

そして、いよいよ優勝決定戦の幕が上がります。シカゴ・モロダーズとの試合は、予想通り激しい展開となりますが、序盤はシカゴが優勢に進めます。ノース・ダラスは苦戦を強いられますが、選手たちは諦めずに粘り強く食らいつき、徐々に追い上げを見せます。終盤、ノース・ダラスはシカゴにあと一歩まで迫り、同点、あるいは逆転勝利の可能性も見えてきます。フィルを含む選手たちは、満身創痍になりながらも、勝利のために全てを出し尽くそうと奮闘します。果たして、ノース・ダラス・ブルズは栄光を掴むことができるのでしょうか、そしてフィル・エリオットの運命は…。

作品の背景

本作は、プロフットボール界のビジネス化や選手の使い捨てのような側面、そしてそれに対する選手たちの反抗や苦悩を生々しく描いています。単に試合の熱狂を描くのではなく、ドーピング、怪我との戦い、チーム内の人間関係、そして巨大なビジネスと化したスポーツ界の現実といった、当時としてはタブー視されがちだったテーマにも踏み込んでいます。テレビ放映時には『ノース・ダラス40～管理スポーツをぶっ飛ばせ！アメフト野郎怒りのタッチダウン！！』という刺激的な副題が付けられたことからも、作品の持つ反骨精神やテーマ性がうかがえます。ニック・ノルティが演じるフィルは、そのような管理社会の中で自己を貫こうとするアンチヒーロー的な存在として描かれています。

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