ノーマン・ミネタ

ノーマン・ヨシオ・ミネタ：逆境を乗り越え、アメリカの空を守った日系人

ノーマン・ヨシオ・ミネタ（Norman Yoshio Mineta、日本名：峯田良雄）は、1931年11月2日に生まれ、2022年5月3日に90歳でその生涯を閉じました。彼は、アメリカ合衆国の政治家であり、元アメリカ陸軍将校です。日系アメリカ人として初めて閣僚に就任し、商務長官、運輸長官を歴任しました。

生い立ちと強制収容

ミネタは、静岡県出身の両親のもと、アメリカで生まれました。しかし、1941年の太平洋戦争開戦後、一家は日系人として強制収容所に送られることになります。ワイオミング州のハートマウンテン移住センターでの生活は、幼いミネタにとって大きな試練でした。収容所では、スカウト活動を通じて、後にワイオミング州選出上院議員となるアラン・シンプソンと出会い、友情を育みます。この出会いは、後の「市民の自由法」成立に繋がりました。

政界での活躍

カリフォルニア大学バークレー校卒業後、陸軍での勤務を経て、ミネタは政界へと進出します。サンノゼ市議会議員、市長を経て、1974年には下院議員に当選。20年以上にわたり、運輸委員会を中心に活動し、日系人強制収容に対するアメリカ政府の公式謝罪と賠償を規定した「市民の自由法」の成立に尽力しました。

商務長官、そして9.11

ロッキード・マーティン社副社長を経て、2000年にはクリントン政権で商務長官に就任。2001年からはブッシュ政権で運輸長官を務めました。運輸長官としては最長の任期となります。

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが発生。ミネタ長官は、アメリカ史上初めて全ての民間航空機の緊急着陸を命令し、国内を飛行中の4638機を2時間20分で強制着陸させるという決断を下しました。この迅速な対応が、更なる惨事を防いだと評価されています。

同時に、アラブ系やイスラム教徒に対する差別を禁じる通達を出し、人種や宗教による差別を拒否する姿勢を明確にしました。この姿勢は、多くの批判を浴びましたが、ミネタは自身の強制収容の経験を踏まえ、「外見や肌の色で判断されることについて、私は実体験として知っています」と語っています。

レガシー

政界引退後も、ヒル・アンド・ノウルトン社の副会長として活躍。2022年5月3日、心臓病のため90歳で逝去しました。その功績を称え、ジョー・バイデン大統領は運輸省が入る建物にミネタの名を冠する法案に署名。また、サンノゼ国際空港は、「ノーマン・Y・ミネタ・サンノゼ国際空港」と改称されました。

ノーマン・ヨシオ・ミネタは、苦難を乗り越え、アメリカ社会に貢献した日系アメリカ人の象徴として、その名は永遠に記憶されるでしょう。彼の勇気と信念は、今もなお、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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