ハイスラー式蒸気機関車

ハイスラー式蒸気機関車：歯車式機関車の進化系

ハイスラー式蒸気機関車は、複数の車軸を駆動する歯車機構を持つ蒸気機関車の主要な形式の一つです。クライマックス式やシェイ式と共に知られていますが、その独特の設計と性能から、製材業をはじめとした様々な分野で活躍しました。

独創的な設計と誕生

1892年、チャールズ・ハイスラーが特許を取得したこの機関車は、1891年には既に試作車が製造されていました。クライマックス式よりも小型であるハイスラー式の特徴は、何と言ってもそのエンジンにあります。45度の角度で配置されたV型2気筒エンジンは、コンパクトながら高い出力を実現しました。このエンジンの動力は、機関車の中央に配置された伝達軸を介して、前後の台車の外側の車軸に伝えられます。内側の車軸は、外側の車輪と連動して駆動されます。

1897年には、3台車式の機関車の特許も取得されました。シェイ式機関車と同様に3台車を備えるものの、ハイスラー式は伝達軸の構成が異なります。シェイ式のように連続した直線状の伝達軸ではなく、傘歯車を介して各台車を接続することで、より複雑な路面状況にも対応できる機構となっています。さらに、4気筒のエンジン仕様も開発されました。

ハイスラー式機関車は、他の歯車式機関車と比較して高速運転が可能な点が特徴でした。製造会社は、低速での牽引力も同等であると主張していました。

製造と歴史

ハイスラー式機関車の製造は、当初はニューヨーク州ダンカークのダンカークエンジニアリング社が担っていました。同社は、独自の歯車式機関車を製造していましたが、ハイスラーの設計を採用したことで、性能向上を図りました。その後、ペンシルベニア州エリーのスティームマニュファクチュアリング社が1894年から1904年まで製造を引き継ぎ、1907年にはハイスラー・ロコモーティブワークスとして再編され、1941年までハイスラー式機関車の生産が続けられました。

ニュージーランドでも、A & G Price社が1943年にハイスラー式機関車の発注を受けましたが、既に生産が終了していたため製造は叶いませんでした。最終的に、1944年に製造された148号機が、最後のハイスラー式機関車となりました。

多様な仕様と特徴

ハイスラー式機関車は、2台車式と3台車式が主流で、その大きさは17トンから95トンと幅がありました。狭軌の機関車も製造されており、用途に合わせて様々な仕様が提供されました。例えば、ミルウォーキー州レイクショア ストーン向けには7号機が製造されました。

利点と課題

ハイスラー式機関車の大きな利点は、シェイ式と異なり、歯車が台枠内部に保護されている点です。しかし、伝達軸が台枠の中央に位置しているため、火室の空間が制限されるという課題がありました。そのため、A & G Price社は、木材の燃焼効率と伝達軸への干渉を軽減するために、ベルペア式火室を採用するなど、改良を加えています。

まとめ

ハイスラー式蒸気機関車は、その独創的な設計と高い性能で、歯車式機関車の歴史に大きな足跡を残しました。コンパクトな設計と高速運転能力を両立させたハイスラー式は、製材業を中心に様々な産業で活躍し、今日では貴重な産業遺産として認識されています。その技術的特徴と歴史的背景を知ることで、蒸気機関車の多様性と進化をより深く理解することができるでしょう。

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