ハインリヒ1世 (オーストリア辺境伯)

ハインリヒ1世 (オーストリア辺境伯)

ハインリヒ1世（Heinrich I, ? - 1018年6月23日）は、10世紀末から11世紀初頭にかけてオーストリア辺境伯（在位：994年 - 1018年）を務めた人物で、強伯（der Starke）としても知られています。

生涯

ハインリヒは、初代オーストリア辺境伯レオポルト1世とリヒャルディス・フォン・ズアラフェルトガウの息子として生まれました。994年に辺境伯位を継承した当時、彼の領土はまだドイツ人による開拓が進んでいない地域を含んでいました。

1002年、皇帝ハインリヒ2世はハインリヒ1世に対し、ウィーン南西の地域とカンプ川・マルヒ川間の地域という、辺境に位置する2つの領地を与えました。これらの地域はそれぞれ、ハンガリー人とポーランド人からの脅威に晒されていました。特に北部からの脅威は深刻で、999年にボヘミア公ボレスラフ2世が死去した後、東方辺境領の北部は後継者ボレスラフ3世の残虐な行為によって不安定化します。しかし、ボレスラフ3世はすぐにポーランド公ボレスワフ1世に敗北し、ボレスワフ1世がボヘミア、モラヴィア、スロヴァキアの支配権を握りました。

ボレスワフ1世は、1002年にラウジッツ辺境伯領、マイセン辺境伯領、バウツェン、マイセンなどを手中に収めましたが、皇帝への忠誠を拒否しました。これに対し、皇帝ハインリヒ2世はリューティチ族と同盟を結び、1003年に攻撃を開始、1004年秋までにボレスワフ1世をボヘミア公の地位から退かせました。しかし、ボレスワフ1世はその後も1018年までモラヴィアとスロヴァキアにおける権力を維持し、東部地域に対する脅威であり続けました。1015年と1017年には、ボレスワフ1世は東方辺境領に侵攻を試みましたが、いずれもハインリヒ1世の軍によって打ち破られました。

2度目の勝利から間もない1018年6月23日、ハインリヒ1世は死去しました。その死は「鎧を着たまま」であったと伝えられています。これは、彼が常に警戒を怠らず、領土防衛に尽力していたことを示唆しています。

「オーストリア」文書

ハインリヒ1世の治世下である996年11月1日、皇帝オットー3世はブルッフザールにおいて、フライジング司教ゴットシャルク・フォン・ハーゲナウ宛に文書を発行しました。この文書には、初めて「Ostarrîchi」という語が登場します。これは「オーストリア」の語源であり、この地域が当時比較的狭い領域を指していたとしても、歴史的に重要な意味を持っています。文書の内容は、「方言でOstarrîchiと言われている地域」、具体的にはノイホーフェン・アン・デア・イップスの地域への寄進に関するものでした。皇帝はこの地をフライジングの修道院に封土として寄進し、周辺の土地や町も後に修道院が獲得、1803年にオーストリアに併合されるまで修道院が保持しました。この歴史的な文書は、現在ミュンヘンのバイエルン公文書保管所に保管されています。

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