ハイ・アンド・ドライ

「ハイ・アンド・ドライ」(High and Dry)は、イギリスのロックバンド、レディオヘッドの楽曲です。1995年にリリースされた2枚目のアルバム『ザ・ベンズ』からのセカンド・シングルとして、「プラネット・テレックス」との両A面で発売されました。

楽曲の誕生と変遷

この曲の原型は、1980年代末にまで遡ります。当時、トム・ヨークがエクセター大学に通っていた際に加入していたバンド「ヘッドレス・チキンズ」によって演奏されていました。1993年には、レディオヘッドとしてデモがオクスフォードで録音されました。この時のエンジニアはジム・ウォーレンが担当しました。しかし、バンドはこの時のバージョンを「ロッド・スチュワートっぽすぎる」として一旦却下しています。

その後、このデモが再発見され、リマスターを経て最終的に『ザ・ベンズ』に収録されることとなりました。初期のアイデアが時間を経てアルバムの重要な一曲へと変化した経緯があります。

トム・ヨークのコメント

2006年、トム・ヨークは本作を「酷すぎる」と率直に評しています。また、EMI（当時所属していたレコード会社）から、本作をシングルとして発売するように圧力をかけられていたことも明かしています。バンドの意向とは必ずしも一致しない形でリリースされた背景があったことが伺えます。

歌詞について、トムは「自分が付き合っていた変な女のこと」を歌ったと述べていますが、「成功と失敗が混ざったような感じ」になったとも語っています。個人的な経験が普遍的なテーマへと昇華されていることが分かります。

ミュージック・ビデオ

「ハイ・アンド・ドライ」のミュージック・ビデオには、2つのバージョンが存在します。

1. バスケスロックス版: ロサンゼルス郊外のバスケスロックスで撮影されたバージョンです。バンドの演奏シーンを中心に構成されています。

2. 『パルプ・フィクション』版: アメリカでのプロモーションのためにキャピタル・レコードが委託して作成されたバージョンです。クエンティン・タランティーノ監督の映画『パルプ・フィクション』をモチーフにしており、道端のダイナーを舞台にしたドラマ仕立ての内容となっています。しかし、過激な内容からMTVでの放送に反対され、最終的に車が爆発するシーンはカットされました。

現在、YouTubeの公式チャンネルでは、バスケスロックスで撮影された最初のバージョンのビデオのみが公開されています。

「ハイ・アンド・ドライ」は、レディオヘッドの初期の音楽性を象徴する楽曲であり、その後の彼らの音楽的な進化を考える上でも重要な作品と言えるでしょう。

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