ハット・リバー公国

ハット・リバー公国

概要

ハット・リバー公国（Principality of Hutt River）は、オーストラリアの西部に位置する独立を主張する小国であり、レオナード・ケースリーによって1970年に設立されました。国の標語は「Dum spiro spero（息をする限り、希望を持つ）」で、国歌は「It's a Hard Land」です。この公国は、実質的には小麦畑を中心にした農業地域で、独自の文化と制度を持っていました。

歴史

公国の設立は1969年に遡ります。この年、西オーストラリア州の政府が小麦の販売量割当を決定したことで、レオナード氏は自らの農場に割り当てられた量が不十分であると感じ、他の農場と連携して政策に異議を唱えました。削減された販売量に対して不満を表明した彼は、最終的に「独立する権利がある」との考えから独立準備を進めました。

1970年4月21日、彼は自身の農場を「ハット・リバー公国」として独立を宣言し、以降「ハット・リバー公レオナード1世」を名乗りました。ところが、オーストラリア政府からは独立を認められず、政府の圧力が続く中、彼は国の運営を続けました。

1976年にはオーストラリア郵便局がハット・リバーの郵便物処理を拒否する事態が発生し、1977年にはレオナード氏がオーストラリアへの宣戦布告をしましたが、数日後には停戦を宣言。その後もハット・リバー公国は小麦の生産を続けました。

国内の運営

ハット・リバー公国は、少数の住民を抱えながらも、独自の政府を構成していました。妻のシャーリー公妃が観光客の受け入れを担当し、長男のイアン・ジョージ氏が首相兼経済開発大臣として小麦の生産と輸出に従事しました。次男のアーサー氏、三男のレオナード氏、四男のグレーム氏もそれぞれ外務大臣や財務大臣、教育大臣として活動していました。

公国の総人口は23人と少数ながら、「世界中に1万4,000人の国民」が存在すると主張していました。主要産業は小麦や観光で、毎年数万人の観光客が訪れるなど、地域社会は賑わっていました。

持続とその終焉

公国は2000年に独立30周年を迎え、レオナード氏の長男はハット・リバーの存続を宣言しました。しかし、次第に国内事情は厳しくなり、2020年8月にはグレーム氏が公国の解散を宣言しました。その理由は、COVID-19パンデミックの影響で観光収入が途絶え、納税の見通しが立たなくなったためです。これを受けて、ハット・リバー公国は公式にオーストラリア政府の支配下に戻ることとなりました。

オーストラリア政府との関係

オーストラリア政府はハット・リバー公国の独立を正式に認めてはいませんが、西オーストラリア州政府は1972年に事実上の自治州と見なす姿勢を示しました。また、オーストラリア国立博物館では、ハット・リバーは「成功した分離の例」として展示されています。

詳細な経緯や法律的な取り決めは、歴史的に興味深い側面を持ち続けています。ハット・リバー公国は、時代の変化とともに独自性を持ち続けた存在でしたが、最終的にはオーストラリア政府への帰属が再確認されました。

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